特別な夏の色彩とそれらを取り巻く昨今の事情(The recent situation about the bright summer colors)」
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「「いやぁ、毎日毎日暑くて参っちゃうね」
陸橋近くのカラーチップ専門店の店先に、
大量のカラーチップを載せた貨車を
長く連ねた色彩運搬列車が到着した。
「いつもごくろうさん。
折角だから冷たいお茶でも飲んでいく?」
店先で迎えたのは、
在庫のカラーチップを丁度
店頭で陳列している所であった
この店の店主である。
カラーチップを積載した貨車の
牽引機である飴機関車を
運転している人物は、
この近くにある
比較的小さな色彩処理工場の
工場長で、
工場の人員が限られている事から、
自ら機関車を運転して、
近隣に毎日カラーチップを
届けて回っているのだそうだ。
「そうしたい所だが、
この後直ぐに隣町の色彩加工工場にも
カラーチップを届けないといけないからな―
いや、やっぱり頂いてから行こうかな。
少しの時間だったら多少の遅れ位は
どうって事ないだろう―と、その前に
渡すものを渡しておかないとな」
工場長は煙の上に載せていた
抽出した色のカタログと請求書を、
カラーチップの店の店主に渡した。
例年のこの時期は―
勿論、先進諸国を始めとした
何処かの国で
さんざん使い古されたような
物体や言葉等から抽出されたものが
大半を占めているのだが、
「夏の輝きや思い出」の
感情や記憶を帯びた色が
店先に並ぶのが常で、
今回入荷されるカラーチップも、
そんないつも通りの「夏の色」なのだが―
「あら?去年の同じ時期に較べて
少し高くなっているような気がするんだけど。
確かに珍しい色もあるけど―」
「そりゃあ、夏と言うものは
いつも「特別」なものだからさ。
そんな「特別」な色が今年は
前の年よりも多く抽出出来たんだ」
C.T.W.(Colour-Trash World)中の
色彩処理工場で抽出される
カラーチップは、
物体や言葉...と言った
抽出対象固有の色や、
その対象に宿る(或いは付着している)記憶や感情、
(その対象に対する)印象から
抽出されたりするものが多い。
季節を表す物質や言葉から
抽出される色のカラーチップも多いのだが、
その中でも
「夏」と言う季節が始まる時期特有の
期待感を感じさせるような色や
「夏季休暇」の記憶や感情を帯びた
物体・言葉等から抽出されるような色は、
クリスマスや年末年始の時期や
春の到来を感じさせる色と同様、
「特別な輝きを帯びている色」として認識されており、
市場に於いては、
他の季節の色よりも
高値で取引されるのが常である。
それに加えて近頃では、
先進諸国と称される国々或いは
その範疇に当てはまらないような国の子供達は
夏の間朝から晩まで、
文字通り「遊ぶ間も惜しんで」
ずっと勉強に明け暮れていると言う話が
よく聞かれるようになったのだが、
その為に
「夏の思い出」を含んだ色の抽出量は
年々減少傾向にあるのだそうで、
以前にもさらに希少価値を増した
「特別」な価値のある色として
市場に出回っているとの事である。
「「どんな色が抽出されるのか」
常に気にしているような私達も、
他の世界の人から見れば
奇異なものに映るのでしょうけど―
それにしても
そんなに勉強して
どうすると言うのかしらね?」
「ウチと取引がある
先進諸国の人間に言わせれば、
将来いい暮らしをしたいから、
今の内に沢山勉強する...んだそうだ。
折角の夏を楽しむ間も惜しんでね―
確かに勉強は必要ではあるが、
やり過ぎは
頭と体と心には
毒だとは思うのだが。
まぁ、だからこそ尚更、
数少ないであろう
「楽しい夏の思い出」の色というものも
輝きを増すんだろうけどな」
工場長は
出されたお茶を飲みながら、
何処か寂しそうにそう呟いた。
「このC.T.W.では―
そう言うのは全く無いと言う訳ではないが、
まだまだ
あまり見られる光景ではないから、
ピンと来ないものだが。
ちゃんと何かを学ぼうとするとどうしても
先進諸国に留学...と言う事になるし―」
「そうそう、留学と言えば、
最近になってウチの子も突然、
「留学したい」だなんて言い出してね...」
工場長は飲んでいる途中のお茶を
吹き出してしまった。
「あ、あの子が留学だって!?
さんざん勉強が嫌いだって
言ってたのに何でまた?」
「何でもウチのお祖母ちゃんの
(色彩処理)工場を
継ぎたいんだとかで、
その為には「魔法の勉強を沢山しないと」って事で
先進諸国に留学をしたい...って。
一体どうしたものかしらねぇ...」
ため息をつきながら店主は言った。
「そいつは立派じゃないか。
そういう事なら
留学でもさせてあげたら
いいんじゃないか」
「うーん...そうしてあげたいんだけど、
その為にはお金を節約しないといけないからね。
...と言う訳で、カラーチップの代金、
もう少しお安くしてくれないかしら?」
「そいつは無理だ。
それとこれとは話が別だからな」」」
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In a watch shop across the street from the inn,
which is a converted old rocket,
a traveler wasasking for a watch to be repaired,
which is apparently not broken.
(※DeepL翻訳を使用・一部改変しております)
(DeepL translation used and partially modified)
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完成後にA4(210×297)サイズ程に
切り取った水彩紙に、
水彩絵の具(、顔彩、ポスターカラー)、水彩色鉛筆で
描いたもの。