まほやくのイベスト『流離の神に捧ぐ祈りは』で披露されたフィガロの衣装から要素を抜き出してドローイングしました。

帽子、手袋、装身具。

以下はコピー用紙に描いた下描きを水彩紙に転写し、必要な部分を再び上からなぞって線画を作成した状態です。今回は厚めの300gの紙なので水張りは行いませんでした。

紙はハガキサイズのホワイトアイビスで、着彩は透明水彩とガッシュを使用。いつも鉛筆のみで主線を描いているため、ペンだとどんな印象になるだろうか……と指先を震わせつつ、紙目がわりと凸凹しているのに苦戦しながらも良い感じになったのではと思います。

ホワイトアイビスは試し塗り以外で今回初めて使ってみましたが、ひとたび乾くと下の色がほとんど溶け出さず、どんどん重ね塗りしていけるのが自分のやり方に合うので素晴らしい特徴だと思いました。コットンとパルプの混合、発色良好、これに紙目の荒さのバリエーションがあればと惜しく感じていたら2025年に細目が販売されるらしくて楽しみ。

重宝しているウォーターフォード細目様よりも廉価なので、使い心地によっては主力選手になるかもしれません。高機能な水彩紙、特に輸入品になるとお高い。庶民はいつも泣いています。

しかも前触れなくいつ廃盤になるとも知れないので、ある意味では画材と絵描きの関係も一期一会ですよね。基本的にはその時手に入るもので間に合わせるしかない、という点で。

ああ、これ、とても良い！　好き……！！

なお写真をご覧いただくとお分かりになる通り、絵を額に入れたあと周辺に彫像を思わせる置き物を配置しているのは、当該イベストからのイメージでございます。

イライジャの館で継ぎ接ぎにされていた無数の彫刻たちと、床に散らばった腕や脚や頭部などのパーツを想いながら。

改造を繰り返された方のぺルラの像は哀しくおぞましい佇まいとして描かれていたけれど、あれはあの造形として、とても美しかったですよね。私はそう思っています。異形と呼ばれるようなかたち、すなわち他者からすればおよそ何であるかを特定できない、既存の枠組みにしまい込んでおけないような姿。恐ろしいもの、畏れずにはいられない存在は美しい。

ただイベストにおいては「話の主旨が異なる」という一点においてのみ、異形のペルラは芸術品としては取り扱われませんでした。今回は単にその外観のみならず、誰がどのような意図でそうしたのか……が特に問われたため。イライジャは勝手にペルラの形を変え、奪っては与え、自分本位なやり方で接してしまった。

さらに彫像の実際面でいうと、機能や効果の話でもあるでしょうか。ミスラが「この館にいるやつとは趣味が合いませんね」に続けて具体的に述べてくれたみたいに。個人的に主に美意識の点を重視しがちですが、神の偶像（あるいはイライジャにとっての神そのもの）として「役割」を考慮するならば、やはりそちらも大切になってくるということ。つまり理に適った姿であれば同じ姿でも異なる表現が使われていたはずです。

ただ、祈りを捧げるためにそこにいてもらう。

見返りを欲して何かしてもらいたいと要求するのではなく、「信じる対象があればきっと生きていける、苦しい時でもきっと神様が見守っていてくださる」と、祈る側が信じているからこそ。信仰の意味はそこに宿り、糧となる。

信じることができる信者は、その時点でもう勝手に救われている。

……すみません、ここまでわりと真面目な話をしていたところ突然恐縮ですが、私はいろいろな種類のフィクションの中にみられる「きれいな登場人物が異形の彫像に思い切り締め上げられている場面」で明確に激しい気分の高揚を感じる、というのが今回のイベストで分かりました。はっきりと。

そういうモチーフからしてもう好きなんでしょう……嗜好には抗えません。そもそも振る舞い、性格を含めたイライジャのキャラクター造形が良かったですね。

加えてフィガロの「懺悔の時間だ」は大好きな台詞でした。芝居を打っていてもいなくても、ぜひこの人に言ってもらいたいもの。

自分の中にある「懺悔」はパイナップルアイスクリームの味をしています。

粒の果肉が入ったもの。甘みと酸味があり、冷たくなめらかなだけではなくて、舌にざらつきを残す。

溶けたアイスが床に落ちると「蟻が来るから食べ物をこぼすな」と言われたのを思い出し、でもここは3階なのにと幼い自分は楽観視しているのだが、田舎では実際に来る。拭き取っても香りが取れないのか来る。蟻の行列を眺め、ああこれから自分の罪は暴かれて、糾弾されて、然るべき罰を受けるのだと静かに覚悟する時の気持ちを思い出す。

これを書いている時点で5周年ストが中編まで公開されており、私はまとめ読みの民なので、後編の最終話が公開されるまでこうして開催済のイベストをのんびり読んだり感想を書いたりして待つ予定です。