公開投稿

2025.04.11 21:16

keep it my back

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 伴侶は寝起きに目を開けた瞬間から完璧だ。髭がボーボーなんてことはないし、寝不足で隈があるとか、深酒して顔が浮腫んでいるなんてこともない。目覚めた瞬間から、パリにある美術館に鎮座している彫刻みたいに精悍で、美しい。おはようの挨拶のキスのタイミングすら精密なのはいっそ腹立たしいほどだ。朝陽の差す部屋で、水を飲みに立ち上がった背中を、まだ睡気の残った目で見上げる。漆黒の、芯のあるまっすぐな髪は今朝も機嫌が麗しく、見えた。

「……なにを笑っている?」

思わず漏らした笑いに、アレシュが振り返った。

「なんでもありませんよ」

上掛けに顔を半分隠して答えれば、訝しんだ視線が返ってきた。

「こら、なにを隠している?」

再びベッドに入り込んで、羽交い締めてくる腕から身を捩って逃げる。

「なんでもありませんってば。……ちょっ、くすぐったいです……ッ」

脇腹をすべる手を振り払いながら、ほくそ笑んだ。これを目にできるのは専権事項なのだ。アレシュの元気よく跳ね上がった襟足の寝癖は、ミランが櫛を通す前にすぐに元に戻ってしまうだろうから。