公開投稿

2025.06.21 10:34

新刊「きせかえ少年」小話【ネタバレあり】

 こんにちは、采田ツガイです。


 新刊「きせかえ少年」について、本編では語れなかった設定や描くときにこだわったポイントなどがあるので、ブログ感覚で記事にしてみました。

 暇つぶしがてら読んでください。

【※この投稿には本編の核心に触れるネタバレがあります。未読の方でネタバレを回避したい方は、閲覧をご遠慮ください】


◇アキくんの家庭環境について

 生まれは両親とアキくんの核家族家庭3人家族です。

 3歳ぐらいまでは両親の仲もたまにケンカはするけどそこそこ円満で、幸せに暮らしていました。その頃は祖父母との交流もあったと思います。

 5歳頃から父親の会社の経営が悪化し、父がストレスで酒に溺れるようになります。この頃から母とアキくんへの身体的暴力が始まりました。

 作中でも描写の在った面前DVに加え、母親への暴言や罵詈雑言も普通にアキくんの目の前で繰り広げられていて、母親は母親で父の不在中にアキくんに父親の不平不満の呪詛を聴かせています(これも作中で描写しました)

 アキくんが小学校入学前に離婚、1年生になってランドセルを背負う頃には、母がパートに出て一人でのごはんが当たり前でした(作中での描写あり)

 アキくんの本名の苗字、「藤波」は母の旧姓です。

 この頃はまだ母親もシングルマザーとしてがんばろうという気持ちがあり、アキくんのご飯も作ってラップをかけて冷蔵庫に保存していました。アキくんは放課後帰宅して、おかずをレンチンして一人で食べていた感じです(低学年だったので火や包丁を使うのは禁止されていました)

 アキくんの母はシフト制のパートで休日も不規則な中、家事もこなし、アキくんの宿題も見てあげて、「良い母親」であろうと努力しました。しかし、パートだけの収入ではやりくりできず、だんだん貯金も減って生活保護の申請に役所に行くも、まだ預金があることを理由に取り合ってもらえず、精神を病んでいきます。

 父親は当然のように養育費を払っていません。(母がDV被害者なので、父親と積極的に連絡を取りたくないというのもあります)

 アキくんがきせかえバイトを始めたのは小学5年生からですが、その頃には母は精神疾患になってパートも退職、家事もまともにできなくなっています。

 その結果が物で散らかったダイニングテーブルです(作中での描写あり)

 ↑このコマはこだわって描きました。空き缶(安酒)・紙ごみ・くしゃくしゃのお札(アキくんのご飯代)・錠剤シートなどが散乱しています。タコピーの原罪(著:タイザン5先生)をリスペクトしています。

 精神を病んでいるので、息子のアキくんがインターネットでデリバリーきせかえと言う危ないバイトをしていても放任されています。

 母子家庭で子どもが児童で母は精神疾患で働けない、ということで、やっと生活保護を受給できるようになります。

 アキくんが小6の頃の母親は躁だったり鬱だったりして、調子がいい時は男遊びをして、体が動かないときは家で寝ています。家に彼氏(とっかえひっかえなのでn人目)を連れ込むこともザラにあるようです。アキくんが母の身の回りの世話をしている部分もあるので、実質ヤングケアラー的な要素もあります。

 アキくんが中学に入って「学食助かるな~」と思ったのは、こういった背景があります。

 母が家事をできなくなってからのアキくんの食事はカップラーメンやスナック菓子、コンビニ弁当など出来合いのものなので、手料理を食べる機会がなくなり、無自覚で味覚障害になっています。給食もあまり味がしないみたいです。

 なので、加藤さんが作ってくれた秋刀魚定食は本当に久しぶりの「あったかい手作りのご飯」で、この時やっと誰かと食べるごはんのおいしさを思い出します。

 アキくんはどんなに家庭が物理的にも精神的にも荒れていても、幼い頃両親と手を繋いで公園に行ったことや、親の似顔絵を描いて褒めてもらったこと、一緒の布団で川の字で寝たことを心の支えにしてそれに縋って生きているので、自分がもっとがんばればもう一度復縁して家族で円満に暮らせると思っています(そんな未来は絶対に来ないとわかっていても、心に蓋をして気づかないふりをしています)

 アダルトチルドレン街道まっしぐらですが、加藤さんと出会って一晩限りの疑似家族の体験をし、学校で再会したことで、アキくんのこれからも多少は明るくなるんじゃないでしょうか。


・加藤さんの家族について

 加藤さんと妻の春美さんは11歳差の夫婦です。加藤さんが38歳、妻が27歳の時に息子の和喜が生まれています。結婚したのは息子が生まれる5年前くらいでしょうか(今考えた設定)

 加藤さんは教員免許を持っていますが、もともとは小学校で教鞭をとっていました。妻と息子の死後は息子と同い年の子どもと仕事で接するのが辛くなり、中学校に勤務しています。

 妻は保育士で、子どもと接するのが好きでもありそれが高じて仕事になってるので、息子の扱いも慣れたものです。夫婦ともに子ども好きなので、イヤイヤ期も協力して乗り越えたと思います。妻は春のお花見や散歩で道端の草花を見るのが好きそうです。春に美しいって名前だし。

 息子の和喜は両親に愛情たっぷりに育てられた元気な一人息子です。サッカーが好きで、将来の夢はサッカー選手らしいです。父の日に保育園で描いた似顔絵は、息子の死後も額に入れて保管されています。(見ると辛くなるから壁に飾ってはいないかもです)

 加藤家では料理は妻の担当で、妻子の生前は加藤さんは自炊経験があまりありませんでしたが、妻の手料理をもう一度味わいたいと思い、料理教室に通ったり本を読んだりして作っているうちに料理上手になりました。アキくんと出会った頃には自分でお弁当も作っています。

 アキくんをネットで見つけたときは息子に瓜二つすぎて驚愕したと思います。息子が生きていたらこんな感じになっていただろうなぁという想像通りの姿だったので、教師と言う立場も顧みず家に招く決意をします。(大人としても教師としても、子どもを家に招く葛藤はあったと思います。が、もう一度息子に会いたいという願望が勝ちました)

 きせかえサービスのサイトには、事前にきせかえの服を用意できるように登録してある少年たちの身長等が載っています。

 それを参考に、子ども服売り場で10着くらい服を新調して、紙袋を抱えて帰ってきたんだろうなぁ、加藤さん……。

 加藤さんが手料理を振舞うのはアキくんが初めてだったので、お口に合うかそれなりに緊張していたかもしれません。美味しいって言ってもらえてよかったですね。


◇中学生で再会してからのかとアキ

 アキくんは中学生になって、バイトをやめて部活に入ったりしていくうちに自然と友達も増えると思います。礼儀正しくて年相応に子どもな一面もある性格なので。

 適度に寂しがり屋なので、加藤先生が学校で他の生徒に囲まれて楽しそうにしていると無自覚で嫉妬することもありそうです。でも胸のモヤモヤが何なのかは自分でもわかってなさそう。

 加藤さんは教師という立場上、学校内でアキくんだけ贔屓することは絶対にありません。すべての生徒に平等です。

 でもアキくんには特別なクソデカ感情があるので、たまに家に招いて宿題を見てあげたり手料理を振舞ったりしてそうです。(これはただのかとアキ願望)

 それこそ、かとアキ間のクソデカ感情についてはゲスト寄稿の冬味かんさんが見事に描写してくれたので、ゲスト漫画是非読んでください。アレがもう公式です。(ファンアート逆輸入)


◇ゲスト寄稿について

 ゲストのお話が出たので、今回お招きしたお三方の寄稿の好きな点をオタク特有の早口で語ります。


【二星さん/カラーイラスト】

 アナログ原画界隈の作家さんです。普段はギャラリーさんの展示に出たり、コミティア等のイベントに出展されています。

 とにかく絵柄がかわいい。塗りがキレイ。アキくんが持ってる四葉のクローバーに号泣しました。幸せになろうな……。加藤さんが持ってる花束も素敵です。

 ご厚意でアナログ水彩原画をいただいたのですが、データでは出ない銀のキラキラが光っていて、是非みなさんにも原画を見て欲しかったです……(おとこのこ創作市に持って行って原画を展示しようと思いましたが、置くスペースがありませんでした)


【冬味かんさん/モノクロ漫画】

 学校に異常なこだわりがある作家さんです。(褒め)

 学校が好きすぎて、背景全部手描きで細かい小物まで描いています。出来合いの背景ではなく手描きするあたりが、こだわりを感じます。食堂の厨房におばちゃん居るのヤバイ。フェチを感じる。

 モブがかわいい~。少女漫画風の表現もめちゃくちゃかわいいです。原稿してるとき死ぬほど参考にしました。

 かとアキにクソデカ感情を抱いてくれているので、解釈完全一致の漫画を描いてくださりました。

 個人的にあとがきの、はさみとノリと木工用ボンドとセロテープと画鋲が癖に刺さります。冬味かんさん、本当に児童の文房具がお好きだなぁとしみじみ感じます。

 お雑煮食べてるアキくん、かわいすぎか???

 Twitterで漫画の紹介と宣伝イラストも描いてくださったので、是非見てください↓


【エマツコさん/モノクロイラスト】

 普段は成人向けのショタイラストと漫画を描いている作家さんです。

 スロウのコスプレをしてるアキくんを描いてくださりました!全年齢本なので健全で!とお願いしました。太もものムチムチ感にフェチが出ている。

 スマホゲームのキャラのコスプレに理解が追い付かない加藤さんかわいいです。解釈一致です。

 目が死んでるアキくんもものすごくかわいいです。

 1ページなのに漫画のような読み応えがあるイラストをありがとうございました!


 ゲストが豪華すぎて豪華客船になっちゃったわね……。

 千円で頒布してよかったです。それだけの価値がありますよ、この豪華ゲスト寄稿は……。

 お忙しい中ゲストに来てくれたみなさん、ありがとうございました!


◇おわりに

 とりあえず、語りたいことはあらかた語れたと思います。予想以上に長くなってしまった。すみません。

 何か追加で言いたいことを思いついたら、また記事を更新します。

 かとアキについては描きたい小ネタがまだあるので、描きたいときに描いていけたらと思います。


 新刊をお手に取ってくれた方、感想をくれた方、本当にありがとうございました!

 また次回作が出たらよろしくお願いします。


2025.06.21 采田ツガイ