最終兵器の誕生

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『最終兵器の誕生』

機械文明が発展し、人と機械が共生する国、ゴルドアイゼン。
冷ややかな鉄製の街並みを、美しい夕日が暖かく照らしています。

「ついに、ついに完成したぞ!」
男は一人、歓喜に溢れた声で叫びました。

その歓喜を向けられているのは、台座に佇む一人の女性でした。
それに応えるかのように、彼女はゆっくりと瞳をあけました。
美しく吸い込まれそうな翡翠色の瞳をもち、
髪はシルクのように美しい女性でした。

彼女の美しさに誰もが心を奪われることでしょう。
そう……彼女に感情というものがアレば。

「さぁ、カトレア。自己紹介してごらん」
「承知しました。マスター」
問いかけに応える女性、カトレアの声が部屋の中で響きました。
しかし美しい澄んだ声でしたが、その美しい声にも
感情はなく、とても無機質なものでした。

「私の名はカトレア。マスターに作られた対魔法用戦闘兵器です」

カトレアの言葉に男は満足そうに頷きました。
「ようやくだ。ようやくあの魔導の国に、
いや、あの女に復讐できる!」
そして喜びを噛み締めながら、叫ぶように言いました。

「それで、君の目的は……なんだね?」
「……はい」

「私の目的は、世界の平和のため、魔法を根絶することです」

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人に備わった“感情”というものは美しく素晴らしいものだ。
疑似的なものであれば、プログラムすることは可能だろう。
しかし、私はしなかった。“彼女”にそんなものは必要ない。
哀情、絶望、まして復讐心などという心底くだらないものは
彼女は永遠に知らなくていいのだから。
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2019年秋開催グループ展「BEST STYLE」で展示した作品『nine-ナイン- ~遠く、誰かのものがたり~』より

「ファンタジー世界と物語」をテーマにした、9つのイラスト&ショートストーリー作品です。


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