盆栽界の巨匠・鶴喰雨月は92歳でこの世を去った。

だが彼は人生に満足していなかった。

社会に迎合することなく、家族に良い顔をしようと無理をせず、もっと己の気が赴くままに芸の道を極めていけばよかったと後悔していた。

その後悔の念ゆえか、彼の魂は200年後の世界に転生を果たす。

東京の中央に世界樹がそびえ、東京樹海と呼ばれる世界。樹上生活を営むハイランダー達が旧時代の遺産を探し、樹海探査ボットが行き交い、未知の危険生物が跋扈する。世界樹を観光資源として立て直しを図ろうとする派閥と、国の土壌から根こそぎ栄養を奪う世界樹を伐採すべきと叫ぶ派閥で割れ、日本は内紛に等しい混乱状態にあった。

ひとりの少年として生まれ変わった雨月は、紛糾する大人たちへ向けて言う。

「あの世界樹、盆栽にしたいんだけど？」

これは、一人の盆栽職人が自己満足のついでに世界を救う物語。

※趣味作品につき、更新不定期です。あんまり期待しないでください。