公開投稿
2025.11.29 19:53
「皿洗いをさせてください」2025/11/29(土)の雑記
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寂しいと皿を洗いたくなる。他人の家の皿を洗うのが好きだ。アルバイトの厨房でもなんでもいい、とにかく皿を洗いたい。
精神の基本のポーズに寂しさや不安の成分が多分に含まれている。初期設定が猫背。昼寝の途中、まだ夢の端っこに繋がっているくらいのとき、自分の腕が自分を抱きしめるように体にがっちり絡みついていた。意識はぼんやりしていたけれど、自分の腕にひどく安心した。指先が後ろの毛を固く引っ掴んでいて、少しだけ痛かった。でもまた眠った。誰かに抱きしめられたいのだろうか。自分の腕は分かりきっているから安心できるだけで、そうではないのかもしれなかった。でも、ともだちに会ったらいつもみたいにハグをしてもらおう、と思ったりもした。短歌の賞に向けて作る連作がぐずぐず崩れていく夢をみた。
皿を洗いたい。と思った。目が覚めていちばんに思った。皿。汚れた皿が見たかった。食事を終えるとすぐに皿を洗ってしまうため、自宅のシンクに食器が溜まることはない。右手で洗った皿を食器乾燥機に移している間、アルミの桶を勘でぐるぐるかき混ぜてフォークを探す時間が好きだ。指に引っかかるとどうしてだかラッキーな感じがする。澄んでいる部分とほかが分かれて、野菜の屑や果物の皮の一部が、渦を巻いた桶の中で縦になる。それをなんとなくまたかき混ぜて、水の秩序を乱しながらフォークを取り上げる。青い皿の淵はすごく「土」のてざわりが残っている。ざらざらして角度を変えると知らない色できらきらしてとても綺麗だ。私はこの家の食器のすべてを気に入っている。自分で買ったものは1割にも満たない。母と暮らしている家なので、幼少期から使っている食器や、祖母に返し忘れてそのままの(裏に油性ペンで苗字が書かれている)平皿やタッパーがみちみちと小さな食器棚に押し込まれている。時折すべて取り出して、食器棚の中を拭き上げて、皿やカトラリーを整理している。まあ、二日後には元通りになる。それでもなんとなく、落ち着かないときは食器に触りたくなる。
皿洗いのバイトの求人を見つけても翌日には埋まっている町に住んでいる。私はその皿洗いのバイトの通知も入れているのに。同じような人間がいるのだろうか。誰か、皿洗いをさせてください。頼みます。最低限の水と洗剤で綺麗に洗うのが得意です。よろしくお願いいたします。ご飯も、必要であれば作れます。肉料理以外ならなんでも作れます。ケーキも焼けます。