啓蟄
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ときメモGS4 本多行×マリィ
原作軸とは完全に切り離されたifです。
「彼女」のいない世界でクイズ王になった彼と、透明な彼女のお話。
黒髪に赤い目をした青年とすれ違った。
春めくパステルの公園通り。
何かを確かめるように歩く革の爪先に、
ピンクの花びらが舞ったような気がした。
思わず「ユリ科の花粉は付着すると落ちにくいから、気をつけて。」と声をかける。
振り返った彼は少し伸びた前髪の奥で目を瞬かせ、
白百合の花束を優しく抱え直すと
「ありがとう。」と大人びた微笑みを残して立ち去った。
彼女を、思い出していた。
人は皆、目には見えないものに生かされている。
そこにはいつだって、始まりがあるのだ。