魔物
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『魔物』
というタイトルの絵画らしい。
正直私には魔物の要素が見当たらない。
この絵画の作者はあるときからずっと一途にこの女性を描き続けたという。その魔物にとりつかれたような様の事を指しているのかも知れない。
この絵画は、そんな作者の遺作だという。
「この世に一人だけだ、私の愛しい人。美しいブロンドの髪も、蒼紫の澄んだ瞳も、陶器のような肌も…もう触れなくなってしまう。私の愛しい人、我が君が居なくなっても、私だけが君を愛そう。こんな時にまで私が画家であったこと、誇りに思うよ。」
「あぁ我が君、君の居場所は額の中だ。私の画の中だ。閉じ込めておきたい。」
「私も君も、一介の魔物だ。人々を魅了してきた。私は画で、君は美貌だ。私は君に惑わされたのだ。君は、私の画に、惑わされてくれた。」
「君はもう私の絵画だ。君の魔力を描いた私の魔力で次は誰を惑わすのだろう。」
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