「奪回」

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「奪回」 “自称悪魔は沖に出る帆船に潜り込み周りを警戒しながらマストを登り燃える船の様子を確認した。さざ波を炎の爆ぜる音がかき消していく。 油をぶちまけられたかのように囂々と燃えるそれは、陸で見た時ほど離れた場所にはなく、すぐに近場に寄ることができた。 足下では大声と警鐘のがしきりに響いている、あの燃えている船の人か物に用があるのだろう。 彼女は騒いでも一向に近づこうとしない船員に苛つきつつ燃える船を観察した。 この規模の火事はそうそう頻発するものではない。おそらくは悪魔共が絡んでいる。 彼女にとってカードそれ自体は特別な意味を持たない。あのどん底を遠ざけ、外で出会い、手に入れたものは全て自分の穴を埋められる大事なものであり、カードと煙草はその手段でしかなかった。 カードを見つけ、それを用いて下僕を取り戻す。 そして今度こそ今まで出来なかった事を、手に入らなかったものを全て手に入れてやるのだ。 そうして彼女は船員の隙を突き小舟を一艘盗み、炎の中へ漕いでいった。 後ろで騒いでいた声は小舟が炎の中へ入った途端ピタリとやみ、業火の中で未だ形を保っている帆船を認めた。 ──誰かが甲板に立っている。 だがグズグズしては小舟の方が駄目になってしまう。 彼女は防火服を脱ぎ、縛り付けていた旗の切れ端を船に引っかけ船の側面へと飛びついた。防火服と旗は燃えることはなかったが、体重に耐えかね繊維が裂け、ついにはちぎれてしまった。 落ちることはなかったが脚を瓦礫で切ってしまった。 悪態をつきつつも手を上に伸ばすと、突然左手を掴まれた。 揺らめく炎が顔を照らす。 そこには知らない男が立っていた。 ” 悪魔が外で手に入れたものを取り返すために、燃える船へ近づくシーン。 煙辿教会の防火服を教会の旗の切れ端で縛って動きやすくしています。 周りを警戒しているのは疑似餌にやられたばかりということと、違和感がなくなるだけで存在そのものを消せるわけではないので海上という閉鎖空間では警戒せざるを得ないためです。 自称悪魔は体格の割にはめちゃくちゃ力持ちですが、化け物ではないです。 また、自分の出自から利他的な考えに強い拒否感を持ち、欲のまま行動しようと強く心がけています。 殺され激怒していましたが、殺されること自体よりもあの場所に戻されたことや、対して気に入っていない服や装飾品、そして下僕を奪われたことにこそ怒りの炎を向けています。 第0話にあたるこの一連の話は課題の残り二回で締められるようにしたいのですが、残り話数がちょっと窮屈でどうしようかと悩んでいます。

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