白い部屋の主

教祖の夏油に飼われて幽閉されている五条の話。

呪術界的には原作通り夏油は呪詛師として処刑対象、五条は行方不明な状態のif世界線です。モブが死にます。

直接的な描写はありませんが、夏五の性行為を匂わせる表現があります。


2024.3.30
夏五webオンリー「いつかまた出逢う」展示作品

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ここにある宇宙



 雲ひとつない青空が見える。

 一色の絵の具でキャンバスを塗りつぶしたような晴天。ベッドに横たわったまま、その空をぼんやりと見つめていた。


「悟」


 呼ぶ声に隣を見ると、伸びてきた手に頭を撫でられた。少し硬い指先が、慈しむように髪を梳いていく。


「何考えてたの」


 静かに問う傑の瞳はどこか憂いを帯びていた。

 大方、僕が外に出たいと思ったんじゃないかとか、そんなことでも考えて鬱々としてきたのだろう。特に何を考えていた訳でもなかったのだが、事実をそのまま伝えても恐らく傑の気持ちは晴れない。受け答えとして不自然にならず、かつ気が逸らせるような話題を探す。空の色だとか、空の高さだとか——


「宇宙のこととか」


 思いつきにしては中々良い話題ではないだろうか。遥か昔に授業で学んだ以上の知識は無いが、雑談にはうってつけだ。


「宇宙の果てって本当に無いのかな」


 宇宙は絶えず膨張して無限に広がり続けているらしい。だから宇宙の果てに行くことは不可能だと言われている。でももし、膨張する速度より速くその先へ行けたら。なんて馬鹿げたもしもの話を遮るように、傑は僕の胸に顔をうずめた。


「……行かないで」


 思わず笑いそうになった口元から、ふ、と息だけが漏れた。

 さすがに宇宙の果てには行けねぇよ。僕のことなんだと思ってんの?

 けれどそう笑い飛ばしてしまうには忍びない、あまりにも切実な、祈りのようだったから。


「行かないよ」


 傑の頭を包み込むように抱きしめる。

 一体、何をそんなにも憂えているのだろう。僕の全てはここにあるのに。

 安心させるように優しく頭を撫でた。長い髪に指を絡めて滑らせる。傑の少し硬い、艶やかな黒髪が好きだ。まだ見ぬ宇宙より、目の前の漆黒が遥かに愛しい。

 何か言いたげに見つめてくる傑に微笑みかけた。まるい額に唇を落とすと心地良さそうに瞼が閉ざされ、その瞼にもキスをする。


 人類の観測可能な宇宙の外側。行くことは疎か、見ることも叶わない果てなき宙。いつの日かその場所を旅することができたなら、最果てを目指してみるのも悪くないかもしれない。

 でも、その時はきっとオマエも連れて行く。


「傑と一緒じゃなきゃつまんないよ」

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