公開投稿

2025.08.14 00:51

紫花イベストの絵の制作過程・細部


イベスト《涙の果てで紫花の微睡みを》に登場した、SSR3人組(ルチル、オーエン、ファウスト)の絵の制作過程です。


3種類あった背景のうち、踊り場の壁がガラス張りになっているのが分かる、柔らかな光が差し込む階段の絵がとりわけ好きでした。

ラベンダーの花や鳥の羽をモチーフにしたのかなと感じる意匠が美しく、それを取り入れた構図を考えます。晴れた日ではなく、曇りの日の陽光が背後から人物を照らすようなイメージ。また、装飾の要素も加味したく、画面の両脇にレリーフ風の帯を配置してみました。

各人物、窓の枠、帯と手前の寝台を別々の紙に描いてスキャン。


アイビスペイントのアプリを使って画面上で構成し、だいたいの色を決めます。

紫のラベンダーを引き立たせるような、深い悲しみのような青が印象に残っていたので、青の色調の中でその幅を探り……方向性が固まりました。



水彩紙は今回もウォーターフォード・ホワイト190gのA4サイズを使用。

購入してからわりと時間が経過しており、風邪引きが危惧されるので早めに使い切りたいところ……!


デジタルで線画を整えたら色を水色にし、印刷した上から鉛筆でなぞります。

このとき少しずつ取捨選択を行い、不要だと判断した線は描かずにおいたり、反対に強調したい部分は元の状態よりも太くしたりと調整。下絵よりも納得のいくバランスにできたら大成功です。もちろんアナログとはいえ後から修正することも可能なのですが、直した部分だけ厚く塗り重ねられて雰囲気が変わってしまう場合もあるため、できるだけ下塗り前の段階で良い佇まいになる方が望ましいでしょう。

その後、普段は万年筆用に使っているインク「ブルー・ヨセミテ・フォールズ」を画面全体に広げます。Ferris Wheel Press(フェリスホイールプレス)の瓶がかわいい製品です。


最初にプリンターで印刷した線は染料インクなので水に溶けますが、ほどほどに残ってくれて、奥行きと何とも言えない風合いが出るところが気に入っています。

とはいえ滲んで汚くなってしまうことも稀にあり、計画と経験が大切だと思うなど。



ここから空間を演出していく作業に入りました。


光が当たる明るい場所は明るく、影が落ちる暗い場所は暗く。

ですがこれは絵なので、必ずしも実際の陰影を「再現」する必要はありません。画面の状態と相談しながら、どうしたらより魅力的な1枚になるのか頑張って考え手を動かします。窓ガラスはより硬質な印象を大切にしたかったのでアクリル絵具の白も併用し、室内の寝台を覆う布の皺や、人物の影は透明水彩を主としてプルシャンブルー系で塗り進めると各要素が良い感じに組み立てられてきました。特にいちばん手前にある布の皺は描き込むのではなく、水彩のにじみだけで簡易的に描画しているのが個人的な楽しいポイント。

固有色は最後、全体のバランスを崩さない程度に乗せるのみに留めます。


色の扱いは全行程の中で最も楽しいと言っていい作業であるものの、同時に難しく、自分が最も苦手としている作業であることもまた事実。

枚数を重ねて修業できたらより上手になれると信じて。



まほやくに登場する衣装は自分が好きな方向性の形や装飾が多くて嬉しいです。


ひととおり着彩が完了したのち、最後にもう一度全体のバランスを確認して、ハイライトを入れたり細部の線を整えたりしました。この作業で指輪やブローチ、顔のパーツ、手の指先などに息が吹き込まれると達成感がつのり、ああ描いて良かったな~と長い息を吐きます。

細目や極細目の紙を好んで使うのは「線」の表現も大切にしたいからなのかもしれません。


しっかり乾かしたら完成です。

ここまで見てくださりありがとうございました。