公開投稿
2025.08.09 19:32
続・にょたイゾ現パロなマルイゾ
拙作「恋するオトメ」の続きです
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真夏の夕方、容赦なく照りつける西陽を背に浴びながら帰宅したマルコは、そのままバスルームへ直行してシャワーを浴び、着替えてからリビングの戸を開けた。途端にひんやりとした空気に包まれ、まさかとソファを覗き込むとそこにはキャミソールにショートパンツ姿で昼寝中の愛しい恋人がいた。
「イゾウ、帰ってたのか! 玄関に靴無かったのに」
嬉しくて思わず覆い被さって、胸に顔を埋めて頬擦りすると「んっふふ、お前を驚かせたくて隠しといたんだ」と細腕で頭を抱きしめられる。
マルコが大学へと進学し、春から一緒に暮らし始めたばかりだったが、イゾウは映画撮影でこの二カ月程留守にしていた。
「何だ、お前。すっかり身体冷えちまってるじゃねェかよい」
「んー、だって暑くて。エアコンつけたら気持ち良くて」
「……んじゃ、おれがあっためてやらなきゃな」
そろりと太腿に手を伸ばすと、慌てたイゾウに制止される。
「あっ、駄目だ。今、生理中だから」
「お前、それは……むしろダメだろい……!」
生理、というワードにマルコの性欲スイッチはバツンとオフに切り替わり、イゾウのクローゼットからセットアップの夏用部屋着を引っ張り出すと無理矢理着せにかかった。
「マルコ、暑い」
「文句言うな。えーっと、あと白湯作るか。腹とか頭は痛くないのか?」
電気ケトルで湯を沸かしながら振り返るとイゾウがニコニコ笑いながら首を横に振った。マグカップを持ってソファに戻ると、後ろから細い身体を抱きしめて摩る。
「今日、そこまで重い日じゃないのに」
「それでも男には知り得ない苦労があるだろ? お前を労わりたいんだよい。おれに出来ることは何でもさせてくれ」
そう言って白湯を勧めるのでイゾウは素直にカップを受け取って口をつけた。マルコがイゾウの下腹部に手を当てるとじんわりと優しい熱が伝わってくる。
「ん、やっぱお腹あったかいと気持ちいいかも」
「お前の美と健康を守るのはおれの生きがいだよい」
ふふ、と嬉しそうに笑ってイゾウはマルコにキスをした。久しぶりの柔らかな唇の感触に全身の細胞がさざめく。
「……夕飯、食いたいモンあるか?」
「特に思いつかないけど、でも、折角だから一緒に作りたい」
「そうだな。ああ、ちょうど今朝オヤジからイワシ貰ったからトマト煮でもやってみるか?」
「えっ、何それ美味そう! おれがいない間に腕上げた?」
「おれが作るモン食ってお前が元気に仕事頑張れるようになったら嬉しいなァと思ってな。少しずつサッチに習ってる」
サッチは二人と同じ施設出身の兄貴分で、トーキョーのレストランに勤めている。大学に入ってイゾウと暮らすようになってから自炊に凝り始めたこともあり、プロである兄弟に頼るようになった。
「おれ、お前がそうやっておれを守ってくれるのが好きだ。思い返すと昔からそうだった。いつも先回りしてケアしようとしてくれる」
「へへっ。おれはお前がそれを『守ってる』って言ってくれんのが好きだよい。ベイやサッチには『過保護』って散々言われてっからなあ」
「お前の優しさだよ。おれにだけ、限定の」
再び唇を重ねてから、イゾウはマルコの首元に頬を寄せた。子供の頃、寂しくて眠れない夜は二人でこうして身を寄せ合っているといつの間にか眠りに落ちていた。慣れ親しんだ体温に安堵を覚えてウトウトしてしまう。
「飯の支度始めるか?」
それを振り払うようにマルコがそっと尋ねると、イゾウは「ううん」と呟いた。
「もう少しこのまま。ちょっとだけ眠ろう」
それなら、とマルコはソファの背もたれにかかっているブランケットを掴んで二人の身体を包み込んだ。腕の中のイゾウが微かに笑ったのを感じながらマルコも瞳を閉じた。