公開投稿
2026.01.05 22:47
かたっぽ②
「かたっぽ」の続き。長くなってきてしまったので一度アップします。多分次の更新で完結します。
※👘が売りをやってる設定です
※🍍が娼婦に手を出してます
🎧「片っぽ」
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森でイゾウの売春行為に遭遇してしまってから、マルコは悶々とした日々を過ごしている。「女はそういう対象ではない」と本人から打ち明けられた時、同性が対象であることは想像できたが、抱かれる側だとは夢にも思っていなかったのだ。あの時から、男の欲を咥え込んで淫らに腰を揺らす姿を思い出す度にどうしようもなく欲情して自身を慰めるようになった。女を抱くよりもイゾウの痴態を思い出す方が遥かに興奮する。それを認めたくなくて、躍起になって娼館へ足を運んだが、娼婦たちの奉仕に満足できない。やっと射精に至ったのは、色白で黒髪の娼婦を立たせたまま壁に押し付けて挿入した時だった。あの時見た光景を再現しながら、顔すら思い出せないイゾウを買った男を自分に置き換えて、イってしまったのだ。
「はは、は……」
力なく笑ってマルコは裸のまま床にへたり込んだ。自身を否定するために娼館に来たというのに、逆に認めざるを得なくなってしまった。
イゾウが欲しい。
欲しいのだ、と。
欲しくて欲しくて、獲物を狙う肉食獣のように密かに後をつけるが、島へ着く度相手を見繕っては宿に消え、翌朝何事もなくモビーに戻ってくる姿にどうしようもなく腹が立った。
だが、ある時ふと思い立ったのだ。欲しいなら自分も買えば良い、と。どんな理由があるにせよ、売りをやっている以上、金が必要なのだろう。それをマルコが知っていることを本人に伝えなくてはならなくなるが、もはやどうでも良かった。むしろ、イゾウがどんな反応を示すか少しばかり興味がある。青ざめて「頼むから他言しないでくれ」と縋ってくるのではないか。自分がどれほど残酷なことを考えているか自覚はあったが、一度胸の内に燻ってしまった火はそう簡単には消えなかった。
◇◇◇
このところ常に見られているように感じる。
身体に纏わりつく粘着質な視線を振り払うようにイゾウは髪をかき上げた。さり気なさを装ってあたりの様子を伺うが、人の気配はない。どうやら相手はそれなりの手練れのようだ。
(厄介事に関わったつもりはなかったが……気づかないところで何かやらかしただろうか)
前夜事に及んだ宿を出て、遅めの朝食をとりにカフェに入った。朝は白米に味噌汁に限る、と思っていたがパンにコーヒーの生活にもすっかり慣れた。テラス席の一角でサンドイッチに齧り付いていると、目の前の席にガタリと誰かが腰掛け、イゾウはチラリと目線を上げる。
「! マルコ……!」
「おう、ちょっと良いか」
こちらを真っ直ぐ見据えていたマルコとバチリと目が合った。まともに話すのが久しぶりで緊張してしまう。
「何の、用だ?」
「やっとこっち見たな、お前。ずっとおれを避けてたろい?」
「え……」
「まあ、良いや。ンなこと話に来たわけじゃねェからな」
バン、と音を立ててマルコが数枚のベリー札をテーブルに置いた。
「足りるか?」
「……?」
「今夜、おれに買われろよい」
その一言に、身体が凍りついた。
「船で気づいてんのはおれだけだ。誰にも言わねェから、おれに買われろ」
こちらを舐めるように見るじっとりとした視線には覚えがあった。
「お前……最近、おれのことつけ回してたか?」
「ああ。お前がおれの誘い断って、森で男とヤってんの見てからずっとな」
ドスリと刀で心臓を一突きされた気分だった。思い人に一番知られたくなかったことを知られていた事実はイゾウの心をズタズタに引き裂いた。俯いたまま黙って胸の痛みに耐えていると、マルコは宿のメモを残して立ち上がる。
「そこで待ってるから絶対ェ来い」
その一言は釘のように刺さり、イゾウをその場から動けなくした。どうしたら良いのかわからない。マルコのことを考えたくなくて始めた憂さ晴らしが本人にバレてしまい、金さえ貰えば誰にでも脚を開くヤツだと思われている。違う、おれは男娼じゃない。お前への恋心が苦しくて逃げ場を求めただけだと今すぐ訴えたくなる。
(そもそも、何で娼婦じゃなくておれを買うんだよ……お前が好きなのは女だろ……)
イゾウは頭を抱えた。一体どんな顔をして待ち合わせの宿に行けば良いのかわからなかった。
***
陽が傾き始めた頃、イゾウは重い足取りでマルコが指定した宿へ向かった。動揺のあまり碌に身支度が出来ず、髪も結っていないし紅も差していない。前の晩、行きずりの男と寝た後入浴はしたが、それでも情事の香りが残っていないか気にしながらドアをノックした。
「遅ェよい」
すぐに出てきたマルコに腕を強く引かれてベッドに放り投げられる。展開の速さに目を白黒させながら、シャツを脱ぎ捨ててのしかかってくる身体を押し返した。
「ちょ、ま、待て、マルコ。本当にするのか?」
「は? 当たり前だろが。おれはお前を買ったんだぞ?」
「でも、お前は女が好きなんじゃ、」
言葉を遮られるように下半身にゴリっと硬いものを押しつけられた。
「ああ、おれァ女が好きなはずだ。なのに、お前がヤられてんの見ちまってから、何か知んねェけど、お前を犯すことしか考えられないんだから仕方ねェだろが」
「! どういう、……っ⁈」
混乱するイゾウの唇にマルコが自分のそれを重ねて黙らせて着物を剥きにかかる。今まで何度身体を売ろうと唇だけは許さなかったイゾウにとって初めてのキスだった。どんな状況であれ、恋慕う相手からの口づけを身体が拒む訳がない。ただ、いかんせん初めてでどうしたら良いのかわからずにいると、マルコの舌が歯列をこじ開けて口内に入ってきた。その甘さに、イゾウは脳が痺れるような快感を覚える。必死で応えようとマルコの首に腕を回して、おずおずと自分の舌を差し出した。角度を変えながらぬるぬると粘膜を擦り合わせると、水音が聴覚からも興奮を煽る。
「はっ。ウブなふりもお前の手管か?」
くちゅっと音を立てて舌を引き抜いたマルコが額を合わせて責めるように見つめる。
「違う! ……初めてだからだ」
「あ?」
「口づけ、初めてなんだ」
この一言でマルコが困惑の表情を浮かべた。嬉しさと悲しさと、相反する思いを抱きながらイゾウがマルコの頬に触れると、マルコはその手をそろりと撫でて取り、自分の指を絡めてベッドに縫い留める。
「訳わかんねェよい……!」
イゾウの首筋に顔を埋め、舌を這わせた。甘くて良い匂いでクラクラする。どうしても手中に収めたかった男は今、自分の腕の中で悲哀の色を瞳に浮かべている。それがマルコの心を惑わせた。金のために簡単に身体を売っていると思っていたが、何かを隠そうとしながら生娘のように必死に自分を受け入れようとしている。けれども余計なことを考えたくなくて、腹を撫で、下へと手を伸ばした。
緩く兆しているイゾウの性器を握って軽く扱くとすぐに硬度を帯びて膨らむ。亀頭をくるりと撫で回してやると、先端から溢れ出た液体が手を濡らし、思わず口元を緩めた。自分以外の男に触るのは初めてだが、女と同じ——気持ち良ければ濡れるのだ。指に滑りを纏わせ、双丘の割れ目へと手を伸ばして後孔にひたりと指の腹を当てると組み敷いている身体がピクリと跳ねた。顔を上げ、少し戸惑ったがもう一度キスをしながら圧力をかけるとイゾウのそこはすんなりマルコの指を飲み込んだ。繋がった口内でイゾウが熱い吐息を漏らしたのを飲み込むと、マルコはグニグニと熱い媚肉を掻き分けて前立腺を探った。ここに挿入るのだと思うと、股間が痛いくらいに反応する。耐えきれずに一度指を引き抜くとイゾウを跨いだまま、膝立ちで上へと移動して、ボトムの前を寛げた。途端にぶるんと飛び出した男根は白い頬を叩いた。
「口でしてくれ」
イゾウは切なげに眉を下げ、マルコと目を合わせたまま顔を傾けて、そそり勃つ先端をペロリと舐めた。それだけでわずかに顔を歪めたマルコの反応を確認してから、ちゅくっと亀頭に吸い付き、唇で喰むように甘噛みを繰り返す。徐々に息が上がってきたところで、そっと根元を握られ、あ、と開いた口内に迎え入れられるとマルコは思わず天を仰いだ。暖かく蠢く舌が脈打つ怒張にしっかり絡み、口の中全体で絞るように吸い込まれながら頭を前後されるとすぐに達しそうになって思わず腰を引いてしまった。ちゅぽんと音を立てて陰茎が飛び出すと、口の端からつ、と唾液が伝う。紅すらさしていない素顔で、こちらの様子をうかがうように見上げるイゾウの美しさはマルコの心を揺さぶった。鎧のようにゴテゴテと化粧や香水を纏った娼婦しか相手にしたことがないからか、目の前の無垢な美貌に目眩を覚えるほどだ。そして、この美丈夫に奉仕をさせている事実はこの上なく支配欲を満たした。
無言でもう一度腰を押しつけると、再びイゾウがちゅくりと音を立てて剛直にしゃぶりつく。先ほどよりもたっぷり唾液を絡ませ、滑りを良くしてぬるぬると舌と上顎で扱かれるとあまりの良さに無意識に腰を動かしてしまう。喉の奥を突かれて顔を歪めるも、イゾウはマルコを咥え込んだまま吐き出そうとはしなかった。うっすら瞳に張った涙と苦しげに歪んだ顔に嗜虐心を満たされ、心のどこかで己の最低さを自覚しながらも快楽に勝てずにより一層強く腰を振り立ててマルコは絶頂に達した。イゾウの頭を両手で掴んで勢いよく飛び出した熱い白濁を喉奥に注ぎ込む。
「ぅっ……! がはっ……っ」
全て出し切ってから身体を解放してやると、イゾウは酷くむせてゲホゲホとそれを吐き出した。
「あ……すまん」
我に帰って声をかけると、イゾウはふるふると首を振ってバスルームへと消えた。次いで、ざあっと水が流れる音と口を濯ぐ音が小さく響き出す。
(すっげェ気持ち良かった……)
余韻に浸りながら、マルコはごろりとベッドに大の字に転がった。娼婦相手に口淫をしてもらった経験はあれど、口内射精をしたのは初めてだ。男の性とでも言うべきか「中で出す」という行為は満足感が違う。しかも、相手はいつも冷静で澄ました顔をしているイゾウだ。あの大きな瞳に涙を溜めて、頬を染め、小さな口をめいっぱい開いて——思い出すだけでまた下半身に熱が集まり始めたその時。キュッと水栓が閉まり、カチャリとバスルームの扉が開いてイゾウが顔を覗かせた。
「マルコ、どうするんだ? ……これで終わりで良いか?」
「ふざけんな。最後までヤらせろよい」
即答すると、イゾウはふっと口元を緩ませた。
「じゃあ、準備するから少し待ってろ」
パタンとドアが閉まり、今度はザアッとシャワーの音が聞こえ始めた。準備、とは恐らく後ろで受け入れるためにほぐすことを指しているのだろう。それくらいはわかるが、女を抱く前に下を触るようなものではないのか。マルコはバスルームの戸をノックした。
「イゾウ」
「何だ?」
「準備って前戯みたいなモンだろ? おれがやる」
「何馬鹿なこと言ってんだ。良いから大人しく待ってろ。お前はおれの客だろう?」
そう言われてしまっては引き下がるしかなく、マルコは再びベッドに転がった。まるで、ごちそうを目の前にしておあずけを食らっている犬のようだ。素っ裸でブランケットに包まって、ゴロゴロと転がっているとやがて水音が止み、イゾウがバスルームから出てきた。ギシリと音を立ててマットレスへ腰かけるとふっと笑った息遣いの後に、柔らかな唇が頭のてっぺんに触れた。
「本当に大人しく待ってたんだな」
「……うんとサービスしろよい」