公開投稿

2024.11.13 23:19

マルイゾワンライ(#生存if #スパダリ #ピュア)

「イッ、イゾーウ!!」

 

 ドッカドッカとけたたましい足音と共にマルコが自分を呼ぶ声が響き渡り、昼食の準備をしていたイゾウはサヤエンドウの筋を取る手を止めた。

 バーン!とドアが開いてダイニングに飛び込んできたマルコは何やら封書を片手に、ハアハアと肩で息をついている。

 

「どうしたんだ、そんなに取り乱して」

「当たった……当たったんだよい!」

「何が?」

 

 怪訝な面持ちで尋ねたイゾウの目の前にマルコは手にしていた書状を広げ、ドヤ顔で叫んだ。

 

「この前、応募した懸賞! 予約二年待ちの最新スパリゾート1泊2日ペア招待券だよい!」

 


***



 モビーに乗っていた頃からマルコはイゾウの美への探求と投資を惜しむことは無かった。むしろ、生きがいと言っても過言ではないだろう。

 ファッション、コスメ、美容法など、仕事の合間に最新情報を収集してはイゾウに提案し、お許しが出るといそいそと何やら入手してくるのだ。特に、ワノ国から帰還して二人でスフィンクスで暮らし始めてからは、輪をかけて夢中になっている。



 さて、件のスパリゾート。

 たまたま二人で大きな街のある島へ買い出し中にキャンペーン広告を見つけたのがきっかけだ。

 『◯◯ベリー以上の購入で話題のスパリゾートペア招待券ゲットのチャンス!』

 という触れ込みにマルコが釣られ、対象商品のビタミンドリンクをしこたま買い込み、イゾウに説教された。

 

「だってよい、あのスパにはミネラル豊富な泥温泉があって、肌がスベスベになるって言うから……お前温泉好きだし、連れてってやりたくてよい……」

 

 スフィンクスに戻り、大量に買い込んだビタミンドリンクを村中に配り歩きながら、しょんぼりとマルコが言うものだからイゾウもそれ以上強く言えなかった。

 それが。

 その懸賞に何と当選したのだという。

 

「本当に?」

「ほら、見てみろよい」

 

 マルコに渡された書面とチケットを確認すると、間違いでも偽物でもないようだ。

 

「へぇ、大したもんだ! やったな、マルコ」

 

 イゾウが笑うとマルコの顔もパァっと輝いた。すかさず抱きしめられて頬と頬が触れ合い、イゾウは思わず、ふふっと笑ってしまう。全くもって本当に、いくつになってもマルコから向けられる真っ直ぐな愛情はこそばゆい。ぎゅうぎゅう引っ付いてくる子供みたいな大きな背中をなでて、ありがとう、と伝えると顔中にキスが降ってきた。

 

 

 翌朝。

 スフィンクスの村人たちが二人の出発を見送りにやってきた。

 

「行きと帰りで一日ずつかかるから、四日程留守にするよい」

「マルコ、せっかくだし、もう少しゆっくりして来たら? シンコンリョコウでしょ?」

「いや、ワノ国の時に長く留守にしちまったから、今回は早く戻るつもりだ。土産は何がいい?」

 

 マルコが子供たちと話している間、船の準備をしているイゾウに年配の女性が声をかける。

 

「マルコったらデレデレね」

「わかりやすすぎて恥ずかしいな」

「いいじゃない。イゾウのことがそれだけ大切なんでしょう。自分のお嫁さんに綺麗でいてもらうためにお金や労力を惜しまない男なんて、そうそういないわよ?」

「……そうなのか」

「そうよぉ」

 

 イゾウがマルコの方をチラリと見ると、何を話しているのか気になるようでソワソワしている。察したイゾウが片手を上げるとフニャっと笑って駆け寄ってきた。

 

「マルコ。お嫁さん、いつも綺麗ねぇ」

「だろぃ? おれのイゾウは今日も世界一綺麗だ。海賊女帝も人魚姫も目じゃねェ」

 

 堂々と答えるマルコにイゾウは思わず赤面した。

 

「おまっ…いい歳したオッサンがルンルン気分で惚気るなよ。恥ずかしいだろが!」

「いいじゃねぇか。お前の美しさに日々見惚れることで、おれはおれの心の安寧を得てるんだよい」

「まあ、素敵!」

「へへっ。更に磨きをかけて帰ってくるから、皆腰ぬかすなy「もういい! もういいから早く船に乗れ、行くぞ!」

「あっぶねーな、そんな押すなって。じゃあ皆、行ってくるよい!」

 

 ここぞとばかりに惚気続けるマルコを、耐えきれなくなったイゾウが押し込み、船が出る。

 村人たちに見送られ、今日もマルコはイゾウへの愛を抱いて海を行くーー。