公開投稿
2023.06.11 18:57
本日公開【空蝉】について
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こんにちは!Katzeです。
本日再録公開した「空蝉」は私が学生時代に執筆した作品になります。
梶井基次郎の「桜の樹の下には」よりインスピレーションを受け、樹木葬というものがあると知り、なら本当に桜の下に死体を埋めてしまえ!という気持ちで書きました。
当時私は近現代文学を読み漁っておりまして、
・ひと夏の恋
・時代を超えた出会い
・本で繋がる関係
をテーマとした本作にも
ロミオとジュリエット/シェイクスピア
初恋/イワン・ツルゲーネフ
嵐が丘/エミリー・ブロンテ
桜の樹の下には/梶井基次郎
など様々な文学作品が登場いたします。
「ロミオとジュリエット」は常盤千代子の恋路が悲劇であることの暗示、
「初恋」は彼女の恋人が運命的な初恋であること、
「嵐が丘」は悲劇がすぐそこまで迫っていること
などを表しています。
「桜の樹の下には」は、最終章にて千代子が樹木葬によって弔われていることを暗示しています。
本編だけで全容が伝わるかわからないので、おぼろげな記憶であり、野暮なことでもありますが、少し解説を。
主人公「僕」は母と妹と暮らす受験生で、市民図書館まで勉強に来ています。
この市民図書館は古い歴史があり、大正時代から建て替えを繰り返して受け継がれてきた蔵書が数多くあります。
千代子もその図書館に通っていたことがあり、何の偶然か図書館でのみ大正時代を生きる千代子の生き霊と現代を生きる「僕」をつなげるきっかけとなります。
千代子は名家の令嬢であり、生まれつき許嫁がいたのですが、それを知らされることなく十七歳まで育ち、その年の春に突然許嫁の存在を知らされます。
ですが、彼女には既に初恋を捧げ、この人こそと決めた恋人がいました。
彼女の両親は厳しいため、身分不明の見知らぬ男と添い遂げることは叶いません。そのため、「僕」と最後に会った日に、「お別れ」をしに行きます。
「僕」に【遺品】として「桜の樹の下には」を預けて。
「お別れ」をしに行った先で、千代子は心中を決意し、恋人と二人で入水してしまいます。——というよりも、初めから心中をするつもりで「お別れ」しに行ったのです。
八月二十九日以降、千代子が現れなくなったのは、千代子自身が亡くなってしまったがゆえです。
樹木葬は千代子自身の希望であり、遺書にも残されていたことでした。(ただし恋人とは別の場所に埋葬されており、一緒になることは叶いませんでした)
それとは別に遠縁の姪に向けて手紙を残しており、それが「僕」の受け取った手紙になります。
「僕」は指定された霊園に近づくにつれ、「彼女」に会えるという確信を抱きながら足を進め、狂い咲きの桜の下で彼女の「幽霊」と再会する——というのが【空蝉】の全体のストーリー、あらましです。
長くなってしまいましたが、こんな感じです。
それでは今日はこの辺で。