「返せって云ってんだろーが!」
いきなり怒鳴られて身体が震えた。
……え?
これ誰?
わけがわからないままふざけて奪った眼鏡を返したら、眼鏡をかけ直して瀧村くんは再び作業を再開した。
「……手、動かさないと、終わりませんよ?」
ぼそぼそとした、同期なのに敬語喋り。
小さく丸まった背中。
顔を隠す、長い前髪とダサい黒縁ボストン眼鏡。
いつも通りの根暗な瀧村くん、だ。
……あれ?
さっきのはなにかの見間違いですか?
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私を抱いたあとに平気な顔で花嫁との永遠の愛を誓う。私の好きな男はそういう男だ。