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2024.05.10 02:39

添い寝【ケイ弓短編小説】

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Xで見かけたこちらが気になったので、即席妄想つぶやき

でもここで妄想つぶやくと、記事を1件1件開かないとなんだけど、カワセミさんとどっちがいいかなぁ




2人でまだPTを組んでいた頃のケイ弓短編



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ケイは成長した弓弦の事を、それなりに意識していた。

だが「ずっと変わらずにそばに居たい」という弓弦の言葉を“弓弦は今の兄妹のような関係を望んでいる”と、ケイは解釈していた。

真っ直ぐで情に厚い弓弦は、幼い頃からひたむきに一途な好意と信頼をケイに向けている。

それはケイにとって、とても心地が良い。

そばを離れたがらない弓弦の好意は、周囲から見て依存的に感じられたかもしれない。

それはケイも同じで、唯一の肉親だった祖母を亡くしてからは、ケイの弓弦への依存と愛情は深く強まっていった。

人間不信気味で、常に周囲を警戒していたケイにとっては、弓弦のそばは唯一の心休まる場所だった。

それを壊したくない。

自然と芽生える触れたい欲求を抑えて、ケイは日々耐える生活を続けていた。



そんなある時、遠征先で一緒に宿を探した。

しかしその日はシングルベット部屋の1部屋しか空いていない。

狭い安宿しか見つからなかったから、ソファーもない。

安宿の床板は掃除が行き届いておらず寝るには不快だったが、ケイは「床で寝る」と弓弦に言った。

それを聞いて、弓弦が少し寂しそうな顔をする。

成長して当然のように部屋や寝床を分けてはいたが、弓弦は本来、一人寝を嫌がる。

なので一部屋しか取れなかった事で、久々に子どもの頃のように並んで寝られるだろうかと、弓弦は秘かに期待していた。

だから虫嫌いのケイが埃っぽそうな床で寝ると言い出した事で、寂寥感から「一緒に寝るのイヤ…?」と弓弦は思わず聞いてしまう。

不安そうな表情を見て、肯定する事もできずにケイは諦めて一緒のベッドに横になった。

狭いベッドは距離が近い。

弓弦は久方ぶりの添い寝でずっと嬉しそうに微笑んでいて、ケイはますます弓弦に罪悪感を抱いた。

寝た振りをしながら、弓弦が眠るのをジッと堪えて待つ。

寝息を見届けると、ケイは溜め息をついて弓弦に背中を向けて、できるだけ端に寄った。

すると温もりが離れた事で、弓弦が寝ぼけながらケイの背中にぴったりと寄り添う。

額を何度も背中に擦り付ける彼女の、小さな胸が背中に当たって温かい。

両親が互いに別の相手を作って蒸発したケイにとって、性欲に溺れる人間は嫌悪の対象だった。

だから、ケイ自身がその欲求に飲まれかけてる事を、弓弦にだけは悟られたくなかった。

それを向けて、万が一弓弦がケイに嫌悪感を覚えたらと考えると、恐怖で体が竦む。

ケイは堪らえるために固く目を瞑った。



朝になって目の下の隈を弓弦が心配したが、ケイは何も答えず、拒むように背中を向けた。

それによって弓弦が寂しさを深めている事も薄々気付いてはいたが、不器用なケイにはフォローの仕方が分からない。

それでも不安を堪えていつも通りに微笑みを向ける弓弦を見て、罪悪感から弓弦の頭をそっと撫でた。

撫でられた途端に、無理して作った弓弦の笑顔が、心から嬉しそうな表情に変わる。

その顔を見ただけで、寝不足で疲弊した心身が休まるのを感じて、色々な事がその瞬間だけどうでもよくなる気がした。

(弓弦が望むのなら、兄妹のままでいい)

心の中でそう呟きながら、今も感じる欲求を隠し通す。

ケイが望めば、弓弦は拒む事もなく喜んで受け入れたであろう事など、余裕がない今のケイには想像すらできない。

弓弦は弓弦で、ケイが両親の件から色恋や色事の話を疎むのを知っていたから、それ以上踏み込む事ができない。

話し合いが苦手な二人は、互いの希望を尊重したつもりのまま、すれ違いを解消する事ができなかった。

ただ、ずっとそばにいられるように、と二人は願った。