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2023.07.26 03:48

お悩み相談①

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今回は有償で『お悩み相談』のご依頼をいただきましたので、こちらの記事を作成して回答させていただきます。

お悩み相談については、専業イラストレーターとしての立場、私の画力と知識で回答出来る範囲でお答えさせていただきます。

お悩み相談以外にも絵描きさん向けの有償サービスはありますので、興味がある方はTwitter固定ツイートをご確認ください。



🎨依頼者様の環境・質問等🎨


[イラスト歴]

デジタルで始めたのは1年前ぐらい

それまではアナログでの経験あり


[制作環境]

自室の机

iPad・アイビスペイント


[制作スタイル]

音楽を聴きながら

制作するキャラの見本を見ながら描く


[質問したいこと]

①線画の描き方

②手の描き方

③服の影の付け方

の3点




🎨質問事項への回答🎨


①線画の描き方


良い線画を描くための方法はたくさんあります。

これらを意識して正確に実行するほど良い線画が描けるようになります。



【意識すべきこと】


・手の感覚を大事にする

線画はイラスト制作の工程の中で最も身体的、スポーツの要素が強い部分です。

なのでその感覚に僅かでも狂いが出ないように維持することが大切です。

私はどんなに忙しいときでも毎日ペンを握って、外出中や仕事中に暇な時間があれば手の運動をしていました。


・ペンを正しく持つ

細かい部分を描くときはペンの先端あたりを、長いストロークを描くときはペンの頭のあたりを持つと描きやすいです。

どこを描くときもペンの同じ部分だけを持っている人は上手く線を描けません。


・筆圧をコントロールする

ほとんど一定の太さで線画を描く作風もありますが、そうでない場合は筆圧調整により線画の強弱をつける必要があります。

あとから線画の太さを変える(後付け強弱)方法もありますが時間がかかるので、出来れば最初から強弱をある程度はつけたほうが楽が出来ます。

また筆圧を適切にすると手の疲労が軽減され、ペンのコントロールもしやすくなります。

アナログで描いていた期間が長い人は基本的に筆圧が強めな傾向がありますが、デジタルではあまり筆圧は必要ありません。

画面をサラサラと撫でる、ペンを滑らせるというような感覚です。

筆圧はソフトの設定でも調整が出来るので必要に応じて調整してください。

筆圧が強すぎるかどうかわからない場合は、長時間イラストを描いた後に手が疲れているかどうかで判断してください。

筆圧が適切であれば毎日13時間イラストを描く生活を続けても手にそれほど疲労は溜まりません。


・始点と終点の設定を意識

始点と終点(線の描き始めの位置と描き終わりの位置)をどこにするか?

これを間違えるとかなり描きにくくなります。

レイヤーを分けてしまえばあとから余計な部分は消せるので、実際に線を描きたい部分から大きくオーバーさせた位置に始点と終点を設定して線を引いてください。

こうすることにより勢いがある線画となります。

線画を描くのが苦手な人はそもそもこの始点と終点を全く意識してない場合が多いです。

それは例えるなら目的もわからないまま電車に乗るようなものなので、当然のように迷子になってしまいます。


曲線を描く場合はこれに加えて中間点、つまりどのあたりを通って終点まで線を引くか、ということも意識します。

ベジェ曲線という機能がありますがそのようなイメージです。

ちなみにベジェ曲線は使うのが面倒ですし使うと成長に繋がらないので使わない方が良いというのが個人的な意見です。


・目線

線を描くとき、目線をどこに置いていますか?

どこを見ながら線を引いていますか?

いつまでも始点のあたりに目線、意識を残していては綺麗な線を引くのは難しくなります。

絵のどのあたりを見たら良いか、どのように視線を動かしていったら良いか?

これは個人差がありますので色々試して自分に適したスタイルを見つけてください。

また中心視でイラストの細部を凝視しながら描くより周辺視のような感覚で見ながら描くほうが上手く描きやすく、また線のゆがみなど改善点にも気付きやすくなります。


・姿勢

慣れればベッドやソファなどに寝そべりながらでも描けるようになりますが、そうでない場合はきちんとした姿勢で描きましょう。

このときに気をつけるべきことは画面を真正面から見ることです。

画面を真正面から見れていないと絵が歪みます。


・キャンバスを回転させる

自分が線を引きやすいようにキャンバスを回転させてください。

神絵師のメイキングなどを見ればわかると思いますが、高い技術を持っている人ですらこまめにキャンバスを回転させ調整しながら描いています。

慣れれば回転なしでもある程度は描けますが初心者がやることではありません。


・拡大縮小をする

長い線を引きたいときはキャンバスを縮小すると描きやすくなります。

細かい部分を描くときはデジタルの強みを活かして拡大して描きます。


・ブラシサイズを調整する

ブラシの太さが適切でないと描きにくくなります。

線画を上手く描けるようになりたい場合、太めではなく細めで描く練習をしてください。

太めだと誤魔化しが効きますが細めだと誤魔化せなくなるからです。

アウトラインは太め、内側は細めなど部位毎に太さを変えるのが大事です。

適切なブラシサイズがわからない場合、線画が上手い参考イラストをキャンバスに貼り、その線画をなぞることでブラシサイズを調べられます。

拡大したときはちょうどいい気がしていても、引いてみると線画が細すぎてインパクトが全然なかったりするのはありがちです。

こまめに引いた視点から確認してください。


・自分にあったブラシを使う

アイビスペイントには元々様々なブラシがあり、カスタムブラシのダウンロードも出来ます。

ブラシ選びはかなり重要で時間をかけるべき部分です。自分に合った最強のブラシを選んでください。


・線画を無理に繋げない

線画はきちんと繋げなくとも、ある程度は隙間が空いていても大丈夫です。

作風にもよりますがはみ出しなどがあっても大丈夫で、それがラフのような印象を与え味になる場合もあります。

ただし初心者がそれをやるとただの雑なだけの絵になりがちなので注意が必要です。


・インク溜まりを作る

線が重なる部分などにインク溜まりを作ってください。一部しかないと違和感があると思いますがこれを全体にやるとかなり見栄えがします。


・レイヤーを細かく分ける

一つのレイヤーで描こうとすると上手くいきませんし色トレスや修正も手間がかかります。

髪、手、というように部位ごとにレイヤーを分け

その髪についても

1.新規レイヤー作成

2.線を引く

3.良い線が描けたらまた新規レイヤー作成、別の線を引く

4.レイヤーが増えてきたら良い線のレイヤーは結合、違和感がある線のレイヤーは消して引き直す

というようにしていくとクオリティが上がります。


・立体感を意識する

初心者にありがちですが、立体感を意識していないとハリボテのようなイラストになってしまいます。

参考資料を沢山用意して観察し、構造を理解してそれを線で表現する技術が求められます。

線をただの色塗りをするための準備、境界線ぐらいに思っていると下手になります。

立体感が意識出来るようになったら次は前後感も意識しながら描いてください。


【用意すべき道具】


・手袋

イラスト制作用手袋をつけて描くと格段に描きやすくなります。

これがないと画面と手の摩擦が滑らかなストロークを邪魔したりして安定して線を引けなくなります。

デジタルでもアナログでも必須アイテムなので常に予備も用意しましょう。


・ペーパーライクフィルム、ペン先カバー

メリットもデメリットもあるのでお好みで。

ペンが滑りにくくなりアナログの感覚で描けるようになります。

ちなみに私はどちらも使っていません。


・アップルペンシルカバー

アップルペンシルのグリップ部分のカバーです。

これについても必須アイテムです。


・iPadスタンド

iPadを立てかける道具です。

安定感があり角度調整が細かく出来るものが良いです。


【練習方法】


トレス練習がおすすめです。

トレスについては過去にやり方を書いた記事を投稿しているのでそちらを参考にしてください。

またトレスするイラストについては線画のプロであるアニメーターの線画、もしくは参考絵師のイラストを選ぶと良いかと思います。

トレスに限りませんが、やり方を間違えると効果がないので注意してください。




②手の描き方


手は人体の中でもかなり難しい部分で、しかも第二の顔と呼ばれる程重要な部分ですね。

人間の手は物を握る、投げるなど細かい繊細な動作をおこなうために発達したので複雑な構造をしています。

ですが人体解剖学だとかそんな難しいことを学ばなくてもイラストを充分に描くことが出来ます。


【意識すべきこと】


・デフォルメ加減

作風にもよりますがアニメ系のイラストなのに手だけリアルだとポ○テピピックのようになってしまいます。逆に手だけものすごくデフォルメされているとそれも違和感があります。

自分の絵に合わせた適切なデフォルメ具合を意識するのが大事です。


・男女の違い

男性の手はゴツゴツとしていて、女性の手はしなやかです。その身体的な特徴を理解して表現しましょう。


・描き順と画数

指を描くとき、端の指から順番に……とか根本から先端に……というように描くと失敗しがちです。

小指と人差し指を先に描いてその間に中指薬指を描く、先端を先に描いて根本へ線を伸ばしていく……

というように

先に外側から描いていくと破綻しにくくなります。

画数についてですが、指も掌も太くなったかと思えば細くなったりだとか複雑に変化するので、それを髪の毛のような感覚で一本の線で一息に描くことは誰にも出来ません。漢字のように画数を決め、関節ごとに描いてあげると上手くいきます。


・感情

手は第二の顔だと書きました。

人間の感情は手に表れますし、人の手を見るとその感情が伝わります。

例えば緊張したり怒っているときは手を硬く握りしめる、恥ずかしいときは顔を触るなど。

まずはその手のしぐさと感情の関係を知識として、感覚として知っていなければイラストにも出来ないので勉強してください。


・サイズ

大きすぎたり小さすぎたりなど、サイズ感がおかしい手を描く人がよくいます。

サイズがおかしいかどうか確かめたいときはキャラクターの顔のサイズと比較するとわかりやすいです。


・可動域

手は柔軟に動きますが限界はあります。

実際に手の演技をしてみて、可動域的に無理がないか、自然であるか、自然な流れでその形になるかを確かめてください。


【楽な描き方】


・写真をトレス、模写する

自分の手を撮影してそれをトレスor模写するやり方。これが一般的ですが、これで難しいのは『手の演技』です。

魅力的に見える手の形を作り、かつそれを魅力的に見えるアングルで撮影する必要があります。

適度に写真を撮るだけでは『構造的に間違いはない』だけの魅力がない手になります。

簡単そうな方法に思われがちですが実際の所難しいやり方です。


・トレスフリー素材を使う

ペイントソフト、インターネット、技法書などにあるトレスフリー素材を使うやり方。

それらの素材は使うためにありますしクオリティも高いので、手を上手く描けるようになるまではとりあえずそうした素材を使うというのもありだと思います。


・3Dモデルを使う

手を自由に動かして閲覧出来るアプリなどを利用するやり方。

ライティングを変えられたり中の骨を見たりも出来ます。


【練習方法】


上に記載した内容を意識しつつ、トレスや模写をする。これしかありません。

参考資料がなくとも描けるようになる必要は全くないので、参考資料さえあれば描ける、というレベルを目指して毎日コツコツ練習しましょう。

外出中や仕事中に暇な時間があれば手をじっくり観察するのも良いです。




③服の影の付け方


服は影の付け方によって質感描写をしたりしないといけないので難しい部分ですね。

ですが解決をしやすい部分でもあります。


【意識すべきこと】


・影は光が届かない場所に出来る

服において陰影をつける部分はシワが出来て凹んでいる部分、体など他のパーツに遮られて落ち影になる部分、光源から離れている部分

大きく分けてこの3つです。

こうして分けて考えそれぞれを別レイヤーで塗るとわかりやすいのではないでしょうか。

1影、2影……という考え方では迷ってしまいがちです。


・素材に合わせた影をつける

服は素材によってシワの出来かたが異なります。

それを意識しないで闇雲にシワをつけまくると、まるでアルミホイル製の服を着ているみたいになってかなり汚い絵になってしまいます。

実際そういう、シワを描くためにシワを描いているんだ!みたいな方を見たことがあります。

シワは主に質感描写をするためにあるわけですから、その本来の目的を見失わないようにしましょう。


・服の下にある身体

服の影によって、服で隠されている身体つきも表現出来ます。わかりやすいのが胸部ですね。

素体をしっかり描けていると陰影もつけやすくなります。


・エアブラシに頼りすぎない

エアブラシは使えばとりあえず立体感が出ますがあくまで仕上げに隠し味程度に使うものです。

このエアブラシだけで陰影を完結させようとするとぼけぼけしたメリハリのない絵にしかなりません。

エアブラシに依存すると成長の妨げになります。


【楽な描き方】


・服を用意する

これが一番です。メイド服や制服のようなものも安価で購入出来ますので、恥ずかしがらずに買ってしまいましょう。

それを着て自撮り、まではする必要はありませんがハンガーに描けたりクッションに着せたりなどしてそれを撮影すれば自分専用の参考資料を作れます。


・参考資料を真似する

顔などを描くとき参考資料を真似して描くと何かと問題になったりしますが、

「あなたこのイラストの影の付け方真似したでしょ」

だなんて言ってくる警察は流石にいません。

何故ならシワや陰影のつき方は自然現象、世界の理だからです。


同じようなポーズ、光源、質感の服と条件が重なる資料はすぐ見つかります。

トレスや完全模写なんかはダメですが、基本的には資料をそのまま真似して描くというつもりで描きましょう。

せっかくピッタリの資料を用意したのに、

「このイラストはここに影をつけているけど、自分もそこにつけたらパクリになってしまう……だから別の場所につけなきゃ」

こんな風に考えては資料が役に立たないどころか、むしろ自分の創作の邪魔になっています。



④おまけ


依頼者様の悩み相談文についての感想です。


・イラスト歴について

デジタルで始めたのは1年前ぐらい

それまではアナログでの経験あり


とありますが、そのアナログでの経験をイラスト歴に含めてないあたり『言い訳をしたい精神』のようなものが見受けられます。

つまり、

「まだ1年ぐらいしか描いてないからこの画力なんだよ、1年にしては成長早いでしょう?」

と自分や周りに言い聞かせてはいないか?

ということです。


自分のモチベを上げるため、維持するために自分のイラスト歴を把握しその成長記録をつける、というのは有効です。

しかし、言い訳をするために利用をしては成長の妨げにしかなりません。

イラスト歴が長いことはなんら恥ではありませんのでアナログでの経験もイラスト歴に含めましょう。


・制作スタイルについて

音楽を聴きながら

制作するキャラの見本を見ながら描く


音楽を聴くことで集中出来る人と集中力がなくなる人がいますし、それは時期や曲など条件によっても変わります。

音楽を聴きながら描くことが自分のイラストのクオリティ向上やスピードアップに繋がっているか考えてみましょう。


仮にですがイラストを描く制限時間が1時間、その時間内に依頼者が満足するイラストを描けなければあなたは死亡してしまう、という状況だとします。

(そんな状況はまずないですが)

その状況であなたは音楽を聴きながら制作するでしょうか?たぶんしませんよね。


音楽を聴きリラックスしながら作業する時間、無音でしっかり集中して作業する時間

というようにメリハリをつけるのが大切です。


制作するキャラを見ながら描く、とありますがキャラの資料だけでは不十分です。

ライティングの参考、服の参考、塗りの参考、構図の参考、瞳の参考、手の参考、構図の参考、表情の参考、エフェクトの参考、線画の参考など……

上手い人ほど参考資料に時間をかけますしその資料をたくさん見て描きます。

1枚のイラストを描くために資料は30〜100だとかそれぐらいは必要になってきます。

もしも10枚以下だとかそれぐらいの資料しか用意していないのであれば努力不足、手抜き以外の何ものでもありません。

資料集めで全てが決めると言っても過言ではないのでたっぷり時間をかけて集めてください。


・相談文について

途中で依頼者様の返信がなくなり音信不通となったせいもありますが、出来るだけ詳細に書いて相談をするようにと伝えたにも関わらず非常に内容が薄いと感じました。


自分は普段○○という風に考え○○をしているが、上手くいかない。

その原因は○○だからかと思いその解決のため○○などをしてみたが上手くいかないので困っている。


↑このように具体的な記載がない場合、そこらの動画や本にあるようなありきたりの情報しか伝えられませんし

何より本人が考える癖がつきません。

様々なことを深く考え、それを言語化するという能力は絵描きとして非常に重要になりますので少しずつ養ってください。