少年と悪い魔女 目覚めの章
現実だから、上手くいかない
──それでも、一欠片の救いくらいは。
年上女性と少年の恋愛短編集 第三集
・淑女のマッチ非売品(書き下ろし)
「慰めの館」という不思議な洋館から出られなくなった女子大生のくれはは、洋館での生活に慣れきってしまっていた。
空腹は感じられず、死でさえも翌日にはリセットされて目が覚める。
機械人形の少年と悪霊の少年に囲まれて、満ち足りた惰性に身を浸からせるくれはであったが、とうとう機械人形の少年の根幹に触れ、慰めの館に招かれた理由──自らの傷について思い出す。
・柱時計の中の山羊
女子大生の葵は卒業後に年上の彼氏との結婚も控えており、幸せの絶頂にあった。
自分を慕ってくれている歳の離れた弟、奏(かなで)の事だけが気がかりだったが、奏から夏休みに二人だけでの旅行を切り出される。弟離れ、姉離れをする良い機会だと考えた葵は奏と一緒に避暑地の別荘を訪れたのだが──
「姉さんの為になら、ぼくは悪者にだってなる」
奏は、幼い頃にした結婚の約束を信じ続け、葵が悪い男に洗脳されたと思い込んでいた。奏は葵を束縛し、惜しみなく恋愛感情を伝え始めるが、葵は奏にどうしても弟以上の感情を向けられない。
弟の気持ちを軽んじてしまった葵は奏に強く出られず、奏の痛い苦しい愛情を受け入れるしか術がないのか。
キーワード:サスペンス/執着/イノセンス/姉弟
・逆位置的ピュグマリオン(書き下ろし)
五歳の誕生日を迎えたユーディットに届いた父からのプレゼントは、機械人形の少年だった。
初めは「お兄ちゃんじゃなくてお姉ちゃんが良かった!」と不満がっていたユーディットだったが、すぐに打ち解け、少年を気に入る。
機械人形の少年は、ユーディットの成長に伴い「お兄ちゃん」「友人」と役柄を変えて理想の関係を保ち続けるも、ある時ユーディットが孤立するのを懸念して、性格を変更を願い出る。
以降「執事とお嬢様」という関係に落ち着くが、年頃になったユーディットは叶わぬ恋を抱き始め──
永遠に少年で、人間ではない機械人形とそのマスターの記憶の話。
キーワード:人外/主従/叶わぬ恋
・深層ピノッキオ(書き下ろし)
機械人形の少年ユリウスは、自分を開発した博士の娘をマスターとして起動する。
機械で全てインプットされたもので構成されているものの、彼に感情というものがないわけではなかった。
そのうちに己の主人へ愛情を感じ始めるが、一定以上の愛情は表に出す事を禁じられている。
不毛な愛を抱き続けながら、主人の一生を見守るだけの記録の話。
キーワード:人外/主従/叶わぬ恋
新書版/二段組/本文340p
※インターネットに投稿したものに、一部加筆・書き下ろしを加えた再録集となっています
※この巻は三部作の下巻にあたります。一つ一つの話は単品でお楽しみ頂けますが、淑女のマッチ非売品に関しては他の巻も参照頂くとよりお楽しみ頂けます。
※上巻にあたるリンゴの章は現在完売し再販の予定はありませんが、上巻の重要話およびシリーズの原点である『期間限定ネバーランド』は単話で頒布しております。シリーズ(特に下巻)として楽しみたい場合は、『期間限定ネバーランド』も併せてお読み頂く事をお勧めします。