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2025.11.24 03:20

Broken pillars〜前編〜

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ここまで書きたい話を時系列関係なくツラツラと書いてきましたか、今回は本編に向けての前日譚の一つとして最初のボス予定のアンドラスくんの話を書きました。前後編に分かれそうな気がするので前半はアンドラスくんの独白形式でお送りします。




俺には姉と年の離れた妹がいた。姉は勝ち気ですぐ人と打ち解け、いつも俺のことを振り回していた。妹は内気で人見知りだけど歌が上手く、俺と一緒だと、ずっとそばにいて離れなかった。俺は姉妹に板挟みにされていたが、それなりに幸せだった。俺がソロモンと契約したのは姉と妹の為だった。不和をもたらす能力を買われ、力を貸す代わりに望みを何でも一つだけ叶えると言われ、姉妹に安定した暮らしをさせてやりたいと、それだけ答えて契約した。


契約を結んでいる間、面倒な事もまあまああったが、ソロモンや他に契約した連中との暮らしは、まあ悪くはなかった。親友のアムやジークも居たからな。だが、ソロモンが死んで契約が切れた後も人間に喚び出されてはアイツを殺せだの潰し合いをさせろだのひっきりなしだった。俺の能力が殺しに関するものだったせいもあるだろうが俺が見てきた人間は全員心が醜くて争いが好きなやつばかりだったもので、いつしか人間への不信感やら嫌悪感を募らせていた。それでも人間の中にも良心を持った奴はいると、そう信じたかった。なのに……


「は?何で……?」

またいつものように人間に喚ばれたと思ったら、この場にいるはずの無い俺の姉妹が血塗れになって倒れていた。何でだ?ピラーズ以外は召喚されねえはずだったんじゃ……

「おお、この殺気……間違いない、アンドラスだ!」

「先程は何らかの手違いで全く別の悪魔が喚び出されたが、今度こそ本物に違いない!!」

「そうだな、さっきの下級悪魔2体と比べて魔力が桁違いだ!」

「さあ、今こそ貴方様のお力で我々の敵を打ち倒してくれ!!」

手違い?下級?何言ってやがる。そこで倒れてる2人は俺の大事な姉妹なんだぞ?コイツらが、この人間共が、自分らのミスで召喚しといて腹いせに殺したっていうのかよ……ざけんなよ。


「ふざけんなよ!クソがああああああああああああああッッッ!!」


気づいた時には辺り一面血だらけで残骸しか残っていなかった。返り血はベッタリついているけど、殺そうと思った瞬間に意識が消し飛んだせいで肉を切った感覚すら覚えていない。復讐した達成感も何もない。あるのは喪失感と虚しさだけ。地面に横たわっている姉妹は酷く冷たかった。冷たすぎて思わず「ヒッ」て声を上げながら手を引っ込めちまった。2人が死んだことを受け入れたくねえけど、死体の冷たさが異常に鮮明に残っている。触りたくない。せめて死体は持ち帰って埋葬してやりたかったけど、それ以上に、あの冷たい感触を2度も味わいたくない気持ちのが勝ってしまった。触れねえなら他にやる事なんて1つしかない。

「ごめん、本当ごめん……。連れて帰りたかったけど、どうしても触れねえんだ。ごめんよ……せめて俺もすぐそっちに行くからよ、ちょっと待っててくれ……。」

そう言って自分の首にナイフを突きつける。俺が死ねば2人を寒空の下で放置せずに済む。そう思って首に突きつけたナイフを一気にぶっ刺した。




おかしい、いつまで経っても死ぬ気配がねえ。血の味とか、喉が痛くて息苦しいのがずっと続いていやがる。死ねない、なんで?確実に喉にぶっ刺してるのに意識が手放せねえ。血溜まりに映っているのは自分の苦しそうな顔と……63?

「嘘だろ……?」

何で序列が浮き出ているんだよ。ソロモンはとっくに死んだはずだろ?まさか、生き返ったって言うのかよ!?俺が死のうとした、このタイミングで?

「は……はは、は……クソッタレが」

最悪だ。死ぬことすら許されないっていうのかよ。あと数秒遅けりゃ姉妹の元に行けたかもしれないのに。ソロモンとの契約で得られる不死の力が、今となっちゃタダの呪いにしか思えねえ。

「クソがッ、ざけんじゃねえッ!!今更不死なんかいらねえんだよ!!返せよ、なあ!?返してくんねえなら死なせろよォ……」

どれだけ首や心臓をぶっ刺しても、頭蓋骨が砕けるほど頭をぶつけても死ぬとこまで至れない。死ねないのなら、いっそ人間を滅ぼすしかない。そんな考えが脳裏に過ぎる。そんなのタダの八つ当たりだ。分かっているのに、どんどん人間への憎しみが溢れていく。ああ、そうだよ。人間が全部悪いんだ。私怨やら何やらで俺に殺させようとする人間共が馬鹿なんだ。でも、そんな人間の馬鹿な願いを断りもせず受けていた俺が1番馬鹿なんじゃねえのか?俺のせいで姉妹が巻き込まれて……嫌だ、そんなこと考えたくない。殺したのは人間だ。人間が悪いに決まってる。でも、もう殺すべき人間は殺しちまった。何処に怒りをぶつけたら……ダメだ、憎しみと罪悪感で頭がぐちゃぐちゃになりそうだ。早く解放されたい。誰か、俺を殺してくれ───。






最後のほう支離滅裂な駄文になってしまいましたが、アンドラスくんの脳内も同じくらいぐちゃぐちゃになっていたんだと思ってください。そんなこんなで薬に手を出すようになってしまうんですが続きは後半に書けたらいいなと思っています。ではまた後ほど。