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2023.05.23 21:06

【特別全体公開】VP#03チラ見せ

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本来なら21日の更新でUPされるはずだったVP#03ですが、まぁ今月は落としましたので。

現時点でまだ書きあがっていない。

……のに、Premium限記事は申し訳ないので全体公開とさせていただきます。

『Vanishing Point』#03「Luminous Point-光点-」の序盤をチラ見せ。

一応現時点でチェック入っていますが、全体が書き終わった時点での最終チェック及び修正で変更される可能性があるので決定稿ではありません。

今回のチラ見せ読んで気になった方は是非とも本編を最初からどうぞ。

ジャンルとしてはサスペンスを目指しているところ。

世界としてはメリーさんのアモル氏作の『虹の境界線を越えて』の舞台でもある惑星「アカシア」のとある街。

現代地球よりは技術が発展していて電脳やら義体やらが実用化されております。

本編中でも電脳を使用しての通信などが要所要所に盛り込まれています。

(義体は今のところ話の本筋に絡んできてないんですけどね……なのでよくある「サイバーパンク」という感じではない)


フリーランスの何でも屋、掃除屋、殺し屋が集う「|暗殺連盟《アライアンス》」に所属している暗殺者チーム「グリム・リーパー」が様々な依頼を受けて暗躍する桜花国のとある街。

ある日、「グリム・リーパー」のリーダーである鎖神 辰弥は倒れていた一人の少女を拾う。

どこから来たかも両親も不明な中、少女は何故か辰弥のことを「パパ」と呼び、懐いてくる。

そのため、身元が判明するまで少女を預かることになった三人だったがそれと時を同じくして死体からすべての血が抜かれる連続殺人事件が発生する。

少女の身元は、そして殺人事件の犯人は。


というわけで本文チラ見せどうぞー


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第3章 「Luminous Point-光点-」


《仕事よ》

 その言葉に、辰弥が小さくため息を吐く。

「どした?」

 オムライスを貪りながら日翔が尋ねる。

「後で話す」

 一言だけそう答え、辰弥は通話に戻った。

(ご飯時分に穏やかじゃないね。緊急?)

《ごめんね、緊急というほどではないけど急ぎらしいわ》

 茜が謝りつつもそう言ったことに、辰弥は些かの不安を覚える。

 最近の『グリム・リーパー』の稼働率は他のチームに比べてかなり高めである。それも、比較的高難易度の依頼のためメンバーの、特に辰弥の消耗が激しい。

 前回の麻薬密売メンバーの殲滅に関しても情報が筒抜けになっていたため罠が仕掛けられ、窮地は切り抜けたものの辰弥が倒れるという事態にまで陥っている。

 それを考慮すると雪啼を拾ったことも含めもう少し休養が欲しいところではあるが依頼が来た以上動かなければいけないだろう。

(来たものは仕方ないね。で、内容は?)

《詳しくはデータで確認して欲しいけど大雑把にいえばサーバ破壊よ》

 ――と、なると鏡介の出番か。

 そんなことを考えつつ、辰弥は分かった、と答えた。

 そんな彼を見上げながら雪啼が「パパ、まだー?」と声を上げる。

 それに対し「もうちょっとだけ待って」と返して頭を撫でてからデータの受信を確認する。

(後でデータ確認するよ)

《頼むわ。ところで、せっちゃんは元気?》

 唐突に茜が尋ねる。

 ん? と首を傾げつつも辰弥は「元気だけど」と返す。

《頼まれてた書類、完成したわ》

 先日、辰弥が拾った少女を「身元が判明するまで」という条件下で保護することになった『グリム・リーパー』。少女が辰弥を「パパ」と呼び懐いていることから彼が少女に「雪啼」という名前を与えていた。その際、何かあった時のため、茜に各種身分証明書の偽造を依頼していたのだが、それが完成したらしい。

 ありがとう、と辰弥が答えると、茜が「それについては」と言葉を続ける。

《|イヴ《渚さん》が届けるって言って聞かないから任せてるわ。近々、そっちに顔出すと思う》

(了解、雪啼の体調が気になるのかもね)

 現時点で目立った体調不良を見せているわけではないが渚としては医者であるが故に気になるというのか。

 いや、それとも。

 ——俺の方か。

 勘のいい彼女のことだ、前回倒れた件も含めて確認したいのかもしれない。

 通話の向こうで、茜が小さくため息を吐いたようだった。

《色々大変だと思うけど、無理しないでね》

(それはお互い様。君も府内走り回ってるって聞いてるけど)

 |暗殺連盟《アライアンス》のメッセンジャーの一人として活動している茜だが、情報屋としても動いている分忙しいと聞いている。

 辰弥たち『グリム・リーパー』としても彼女の情報はある意味死活問題に繋がるのでできれば倒れてもらいたくない。いくら鏡介がハッキングで情報を集めることができるとしても人の足でしか集められない重要な情報が多々あるからである。

 ありがとう、と茜が答える。

《ご飯時分にごめんね。せっちゃんによろしく伝えといて》

(雪啼も君と遊ぶのを楽しみにしているところがあるからね。でも気を付けて)

《分かってるわ、近所で殺人事件があったんでしょ? 警戒するに越したことはないわね》

 どうやら茜もあの事件を知っていたらしい。

 流石情報屋、ニュース報道よりも早く事件の情報を入手していたか。

 ただ、

《私も三件目の血を抜かれた殺人事件があったとしか知らないの。情報が少なすぎるわね》

 そう、茜は言い切った。

(三件目?)

 そういえば、前回の「仕事」の前にゲン担ぎも兼ねたニュース巡回でそのようなニュースを聞いていた記憶が蘇る。

 ちょうどその前の天空樹建設の会長を暗殺した日、同じ地区内で死体が見つかっていたが警察の発表によりその遺体からはすべての血が抜かれていたと報道されたのを皮切りに、これで三件目か。

 「仕事」の時以外は基本的にニュースの確認を行わないので二件目は把握していなかったが、これは連続殺人事件と認定していいだろう。

《とにかく、みんな気を付けて。たかが殺人犯に遅れをとるようなメンバーじゃないけど……》

 それはそうだけど、気を付けるよありがとうと言い、辰弥が通話を切る。

「お待たせ」

「パパー、おそーい!」

 何事もなかったかのようにスプーンを手に取った辰弥に、雪啼が頬を膨らませるが彼は「ごめんごめん」と謝り、再度頭を撫でる。

「んー」

 頭を撫でてくる辰弥の手にまんざらでもない、といった顔になる雪啼。

「パパ、パパのオムライスおいしい」

「それはどうも。作った甲斐があるよ」

 辰弥がそんなことを言うと雪啼がニッコリと笑ってスプーンにオムライスを乗せる。

 それを辰弥の方に向け、再びニッコリと笑う。

「パパ、あーん」

「え?」

 雪啼の顔とスプーンを見比べ、辰弥が目を丸くする。

「え、ええと……」

「あーん」

 再び、雪啼がそう言い、スプーンをさらに辰弥に近づける。

「え、あの、だから」

「あーん」

 何故か、辰弥の心臓が早鐘を打つ。

 いいのか、これを食べていいのか、とドキドキしながらちら、と日翔を見ると彼は彼でニヤニヤしながら様子を窺っている。

 ――いや流石にそれは犯罪……

 そんな考えが頭をよぎる。

 だが、せっかく雪啼が食べさせてくれるというのにそれを断るのは無粋というもの、と、辰弥は思い直し、口を開けた。


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こんな感じです。

せっちゃんにあーんしてもらう辰弥、羨ましいぞそこ代われ!

……とは言わない。


ちなみにこの部分作成に当たり、1章を一部分修正しました。

該当箇所は後半のミッションシーン冒頭で、辰弥が仕事前の日課(?)でニュースを見ているというシーンが追加。

しかし、ここからどんな展開になるのか。

本編更新までお待ちください。

12月の更新でUPできるようにしたい……