公開投稿

2024.01.24 22:45

『ただ進むだけ』

散文です。


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 気のせいだろうか。

 笑っていない。

 口元は緩い孤を描いているのに、こちらを捕らえる双眸の輝きは、鈍い。

「なんで、今さらそんなこと訊くのかな」

「今さら? 私はいつだってあなたから直接愛を囁いてほしいだけよ」

「もうすぐ結婚なのに?」

 そう、やっとここまで来たんだ。

 もうすぐ、野望が叶う。解放されるんだ。

「ふふ、相変わらず女心がわかってないわね。可愛いけど」

 ゆるゆると頬を撫でてくる。震える息を頑張って飲み込んだ。

「こら、くすぐったいよ」

「なら言って?」

 瞳の輝きは、変わらない。

「――愛して、いるよ」

 大丈夫。最後までうまくやれるさ。