この町は、きょうもあなたがいるから廻っている。
第二話「人妻と正義のロックンロール」
山椒魚町四丁目河童三番地にある激安長屋に引っ越した大学生・湖径《こみち》。
この山椒魚町は人と人の生活圏が重なっているような匂いがした。
駅の細いホームに並ぶ列へと割り込んでくるおじさんのような人もいない。
かつて、所属していた【読書部】を廃部に追い込んだ事件のきっかけになったような人物もいない。
ただ、人の温かさと、ただ大学の後輩に付け回されている事と、
ただ……個性豊かな住人が山椒魚町にはある、だけ。
表示設定
0
158