「ありがとう。俺を憎んでくれて。
俺たち、妬み合いながら、憎しみあいながら、アイツらの幸せを一番近くで見守りましょう?」
水木と鬼太郎の母が憎しみあいながら幸せな家族を紡ぎあげるハッピーエンドのお話です。
恨みと書いて愛と読む。
つまり、子供を抱けなかったという無念の感情で水木に憑りつかざるおえなくなった母と、あえてその状態を維持しようとする水木の話ということです。
注意書き
・二次創作作品です。原作・公式、およびその関係者、地域、歴史上の出来事、思想とは一切の関係がありません。
・キャラの口調や思考、習慣や風習、思想などは個人の解釈・妄想です。原作・公式、また、他者の解釈や妄想、それにより生まれた呟きや作品を否定するものではありません。あくまでも一個人の妄想ととらえていただきますよう。
・映画ゲ謎のネタバレが含まれます。
・原作などで未履修のものがある状態で書いております。
・時代考察は曖昧です。
・暴力描写が含まれます。
こちらのことが、苦手な方、また、読み進めるうちに得意としない個所がございました方々は即座にバックスペースを推奨いたします。注意書きまでお読みいただき誠にありがとうございます。
大丈夫という方のみ、この先におすすみください。この先が、ささやかな楽しみになれればと願っております。
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始
青年は寂しかった。寂しかった。さびしかった。
大好きだった養父が亡くなり、ぽっかりと心に穴が開いたようだった。
養父は人間で、青年とは異なる。だから青年にとって、とても僅かな時間しか共にいれないこともわかっていた。
知っていた。理解していた。
けれど。
いざ、彼が亡くなってしまうと、まるで全てが消えてしまうかのようで、随分と寂しかった。あんなにも耳馴染んでいた子守歌が聞こえない夜なんて、来なくてもいいとも思えてしまった。
わかっていることと理解していることと、納得していることは別ものだった。
養父の、墓をそれでも暴こうと思わなかったのは、彼がやっぱり人間だからだ。人間の彼は、最後まで人間であろうとした。妖怪になろうとはしなかった。だから、その意思を尊重した。
その魂を探しに行かなかったのは、これ以上、人間である彼を、自分達妖怪に縛らせてはいけないと思ったからだ。
彼の魂はいずれ優しい場所にいって、そして自分とは違う場所で幸せになればよいと。そう思っていた。否。言い聞かせていた。
母の、墓を暴こうと思ったのは。けれど、やっぱりそれでも寂しかったからだ。だから父と相談し、母を蘇らせることにした。
人間の彼と違い、妖怪の母を蘇らせるならば、きっと許されるだろうという気持ちを抱いたからだ。なにより、やっぱり青年は。
妖怪の青年は。
母と暮らしてみたかった。
本当は四人で暮らしたかった。
養父と母と、父と自分。
四人で暮らしてみたかった。
けれど。
それは土台、無理な話だ。
わかっていた。そう、わかっていた。だから。
墓を。
母の墓を、暴いて。そして、その死体を蘇生し、そして……。
「……これは、どういうことだ。鬼太郎」
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