公開投稿
2025.08.25 21:00
【得ざるものども】地図を作ったよ!~フェガティア地方編~
※創作物の性質上、時代錯誤な価値観、深刻な人権侵害の描写、ややブラックなツッコミ等、一部不適切な表現が含まれます。あらかじめご了承ください。
『得ざるものども』の舞台となる架空の地フェガティア。
その都市内部と地方全体の簡易的な地図を作ったので、世界観の設定や背景にあるストーリーを交えながらご紹介しようと思います。
今回は地方全体の地図をお見せしていくのですが、その前に、『得ざるものども』の世界背景を軽くおさらいしておきましょう。
【得ざるものども 世界背景】
物語開始の百年以上前のこと。
多くの国を巻き込む大戦争のその最中、原因不明の異常気象による大災害と、致死性と感染力が強い疫病の蔓延という、未曽有の大惨事が世界を覆いつくしました。
国家という枠組みはあえなく崩壊し、地球は荒廃しましたが、それでも人類はどうにか生き延びました。
現在、人々は荒野に点在する都市とその周辺地域に身を寄せ合って暮らしており、文明が再発達した一部地域は、大災害以前と比べて遜色ないほどに栄華を極めています。
しかし、大災害を生き延びた後遺症として、封建的な身分制度や様々な差別が根強く残されており、階級による民衆の分断も深刻化しているようです。
そんな中、少しでも良い世界を目指してもがき苦しみながらも戦い続ける人々の生き様を通し、正しさとは何かを見つめていく……
『得ざるものども』はそんな趣旨のお話になっています。
それでは地図を見ながら色々と説明していきます。
【イブレガーロ連盟 フェガティア地方地図】
フェガティア地方の主な交通網と産業区画はこのようになっています。
道路の敷設についてはあまり深く考えないでやっているので、おかしいところがあっても生温かく見守っていただけるとありがたいです……。
本当はいくつもの村落が存在するのですが、都市部と農村『エイツ』以外は物語には登場しないので省略しました。必要になったら加筆します。
【地域の特色】
水が豊富で土壌も豊かなので、古くから農業が盛んな地域です。
名産品は赤ワインと高品質な小麦。それから大自然の中でのびのびと育ったブランド黒毛牛も有名です。
↑作中の登場キャラクター、片角のウィケトリケス(愛称トリッキー)もそのブランド牛なんですよ。
本来であれば「肉牛の雄を信じるな。奴らに決して背中を向けるな」なんて言われるくらい危険な生き物なのですが、トリッキーはかなり人懐っこいようです。
からすきという道具を付けて耕作を行う「からすき牛」として、ゆっくり力強く農業を手伝ってくれているんですよ。
しかし、彼はどうして片角なんでしょう……?
閑話休題。
この地方の中では比較的新顔のドゥリオルグ家は、『サラマンドル』という廉価な大衆ワインのブランドでその名を馳せており、新進気鋭のワイナリーとして注目されています。
(ところがどっこい、地域企業有利のゴミカス贔屓制度で連盟外の企業を締め出したおかげでのさばれているだけの腐ったブドウ水製造会社なんていう、口に出すのも憚られるような陰口を叩かれているようですよ。酷すぎませんか?何があったんですか?)
フェガティアの食文化は穀物と肉類が中心です。主食では小麦の方がよく食べられていますが、お米もそれなり食べます。
アルウェン湖で淡水魚も獲れますので、お魚好きの方も大満足なグルメをお楽しみいただけることでしょう。
最近では、物語の主人公フリアン・カレスティアが勤めている食品会社D.F.Tec(ディードリヒ・フード・テクノロジー)が、小麦をふんだんに利用した新しいお菓子を開発中なんですって。
こういう情報をまとめるのって、なんだか観光案内みたいで楽しいですね。
【フェガティア地方の歴史】
先述したように、この地方は豊かな水源と肥沃な土壌を有する一大農業地帯で、 古来より領有権を巡って多くの支配者が争ってきました。
中世の時代、ユーロメルクス王国王から命ぜられた辺境伯が、城塞都市フェガティアを作り上げて統治したことで、ようやく情勢が安定したとされています。
この城塞の名前は、後に地方全体を指すものとなりました。
ピエタール山脈の向こうにある北方の国々との交易拠点にもなっていたので、周辺地域の食糧庫のみならず、北方の洗練された文化との出会いの場としても重要な役割を担っていました。
【都市としてのフェガティアの歴史~大災害からの復興~】
世界中で異常気象が猛威を振るった時、フェガティア地方およびその周辺は、極度の高温と乾燥化に見舞われました。
テンナ川は干上がり、土壌は乾きひび割れ、農作物は枯れ尽くし、ピエタール山脈では自然発火による山林火災が頻発しました。
フェガティアの都市には火の粉が雨のように降り注ぎ、城塞周辺に建てられていた美しい木造の街並みは見るも無残に焼け落ちて、山火事が終息した時に残っていたのは、高台の城塞とテンナ川流域に作られた石造りの旧市街だけでした。
絶望の中にあった人々の命をつないだのは、一人の男とピエタール山脈が育んだ地下水です。
後にイブレガーロ連盟五大英雄の一人として語り継がれるマッカーニ伯爵家の三男バームントは、焼け野原となった街で絶望に打ちひしがれる人々を鼓舞すべく、自らの足で周辺を調査し、地下水を利用した灌漑農業が可能な地域を突き止めました(現在の畜産業エリアのあたり)。
そして、爵位を賜った高貴な家の子息であるにもかかわらず、生き残った庶民たちに混ざって自らも体を動かし、耕地を広げていったのです。
少しずつ食料の生産がおこなわれるようになると、話を聞きつけた人々が、食料と水と仕事を求めて城塞都市に身を寄せました。
十数年の後、過酷な高温乾燥傾向が幾分和らぎ、テンナ川に水が戻ってからは農業の規模をさらに拡大させ、周辺地域にも食料を行き渡らせることに成功します。
フェガティアは人類生存圏の希望の地の一つとして栄え、城塞の周辺には様々な文化が入り混じる華やかで不思議な石造りの街が再構築されていきました。
こうして、一度は全てが涸れ果て焼け落ちてしまったフェガティアは、かつての歴史をなぞるように農業地帯として見事な復興を果たしたのです。
イブレガーロ連盟に加盟してからは工業化も進みつつあり、連盟北部で最も重要な産業拠点となっています。
そんな現在のフェガティアは、とある出版社が調査した『若者が住みたい街ランキング』で、連盟主導都市 大都会ユーロメルクス、風光明媚な海岸の都フィルマーエに次いで、なんと堂々の第3位に輝いています。
設備が近代的、仕事と娯楽が充実している、食事が美味しい、街並みがまあまあおしゃれ、都市中心部から少し離れれば自然を満喫できる……。
そのあたりが魅力だそうですよ。
ところで、上記の歴史の記述では疫病に関する情報が欠落していますね。
それに関しては、次回更新予定の『フェガティア都市部地図解説』にて触れることになります。
【他の都市との接続】
連盟自動車道8号線をひたすら西に進むと、イブレガーロ連盟主導都市であり、かつて存在した王国の元王都、ユーロメルクスに辿り着きます。華やかかつ荘厳な街並みと、近代的な建築物が共存する大都会です。
東に進むとオアシスに築かれた都市カスタスへと至ります。連盟の最東端に位置する都市で、王都と砂漠の文化が入り混じる不思議な場所です。
南に進むと連盟中部の交通の要所、運河の都市コメンキュームへと辿り着きます。テンナ川は運河としても利用されているんですね。
北はイブレガーロ連盟とは別の都市共同体、ルザーニィ連邦の領域です。北方は土地が痩せている所が多く、向こうでの生活は色々と大変なようです……。
(物語後編『黄金の果実といばらの君』では連邦の都市ゼラーナミス出身のキャラクターが登場するのですが、それはまた別の機会にお話しします)
各都市にたどり着くまでの間にも無数の都市や村落がありますが、名前が必要になったらその都度決めるという行き当たりばったりな創作スタイルなので、後の事はなんもわかりません。
都市や村落は種まいて水をかけておくといつの間にか建ってるものだってばっちゃんが言ってた。
【ところで、この世界には自動車道路網が存在したんですね!?】
何も考えてなかった原作者もこれにはビックリ。冷静に考えたら無い方がおかしいのですけれども。
メインとなる道路網はそのものズバリ『連盟自動車道』です。ひねりゼロの直球ネーミングが気になるところですが、物語にはほとんど登場しないはずなので、まあ、ね!
そうは言いつつも、新連盟横断自動車道、略して新連横(しんれんおう)のそれっぽさは妙に気に入っています。
「無茶言うなよ、新連横かッ飛ばしても二日はかかるぜ?」みたいな日常会話セリフがあったら、私がとても楽しくなるので良いですね。
うーん、でも新横道でもよかったかな……。
新連盟横断自動車道があるなら、旧連盟横断自動車道も当然あります。新連横に倣って旧連横と呼びましょうか。
旧連横は世界戦争が始まる前から存在しており、ユーロメルクスを開始地点、フィルマーエを終着点とする、連盟のほぼ中央を横一直線に走る全長約400kmの道路です。400という数字は今考えました。
まだ古い道路があるのに、なぜ新しい横断自動車道を設定したのかと言いますと、そこには連盟が抱える治安の問題が深く関わっています。
イブレガーロ連盟の中部と南部は、圧政に耐え兼ねた民衆が武装蜂起して都市機能を崩壊させてしまうくらいには治安が悪く、事態終息の見込みは未だに立っていません(連盟に敵対する勢力が民衆の不満を煽っているという噂があるよ!)。
治安維持組織だけでは人手が足りず、本来は畑違いの警備隊までもが鎮圧作戦に駆り出されている影響で、道路上の守りが手薄となり、その隙を突いた略奪者による輸送車襲撃事件が頻発。ますます治安が悪化するという負の連鎖に陥っています。
そこで、まだ比較的治安が安定している北部経由の道路を、新たな連盟横断道路として設定することになったという訳です。
もっとも、上流階級の内ゲバによる政治の不安定化と、中部から北上してきた略奪者の影響で、北部もきな臭くなってきているため、農村『エイツ』の村人たちが大変な思いをしているようです(後述)。
ちなみに、連盟には鉄道もあるにはあるのですが、これまた予算と警備の都合でボロボロのまま放置されています。
本編終了後から数十年の間には復活するんじゃないでしょうかね。貨物列車は旅客列車よりも十年くらい早く走り出すのかも。
【農村エイツについて~村人たちと救世主フリアン~】
エイツは物語前編『揺籃と怪物』で頻繁に登場する農村です。
主人公フリアンが業務の一環で訪れる場所の一つですが、業務関係なくお気に入りの場所でもあります。ってしまった!この村の地図も作らなきゃ……。
収穫の時期になると、あたり一面が黄金色に染まって壮観なんですって。
↑『揺籃と怪物』メインイラストより、エイツの村人たち。他にもたくさんの方がいらっしゃいますよ。
おやっさんの笑顔がお気に入りです。歯茎むき出しスマイル!
物語開始のおよそ七年前、工場地帯拡張の為に古い小麦畑を潰し、南の荒野を開墾しようという計画が立ち上がりました。
その拠点として新たに設置されたのがこの村なのですが、自動車道路の項目で触れたように、荒れ地はとにかく治安が悪く、その上警備もなんだかふわっふわ。(なんとエイツ開村時に武装していた人は、農民脱走防止目的の監視係二名だけ!)
小麦畑拡張計画を立てたはいいものの、政治の混乱のためにその進行は二転三転。現地には掘っ立て小屋みたいな仮家ができただけで、インフラ敷設工事はいつまで経っても始まらない。こんなふざけた公共事業があってたまるかって思うじゃないですか。悲しいけどこの世界じゃよくあることです。
しかも、小麦畑の拡張計画の監督を委任された企業の社員は上級市民なので、歴史的な理由があって一次産業に従事する下級市民の事を蔑視しています。彼らは治安の不安定さを理由にほとんど村を訪ねることはなく、真面目に仕事をすることもありませんでした。
開村から五年後、監督企業がD.F.Tecに変わったことをきっかけに、ようやくまともじゃないくらいまともに仕事をするフリアンが派遣されてきた時には、村人たちはボロボロの民家で雨風をしのぎ、人力で広大な荒野を開墾しながら耕作をするという、劣悪極まりない環境での重労働を強いられていました。
↑状況を全て把握したフリアン(19)のイメージ
「うっそだろ…許せねェよ…」
これには怒り心頭のフリアン・カレスティア。一刻も早くエイツの人々を救うべく、一年間に亘って以下のように東奔西走大暴走を繰り広げました。
・作業をさっさと機械化するため、経費申請書類の許可なんか待ってらんねぇと言わんばかりに農具自費購入は当たり前。
・ボロボロの家はまだ発足したばかりの機械開発部メンバーを総動員し、隣町の親方から指導してもらって修繕。大工技術を積極的に村人へ伝授。
・畜産業エリアから脱走したウィケトリケスをかくまった報復として、村の風上にうず高く積まれた牛糞をたい肥化して土壌改善に役立てる。なんだったら嫌がらせの主犯の元まで行って牛糞のおかわりを要求。こうして無事牛糞野郎という誉れ高いあだ名を賜る。
・警備隊の巡回を強化してもらうため、親会社DAGの重役たちに見るのも聞くのも嫌になるくらいの数字と専門用語まみれのプレゼン資料をたたきつけて長時間拘束し、根負けさせて警備部門を動かしてもらう。なお、重役の中にはフェガティア五大英雄の継承者の一人で、DAGの最高責任者であるディードリヒがいたのだが、その彼をして「彼の度胸と行動力は異常。逆に心配」と言わしめる。
・なおも動きが鈍い役人のケツを思い切り蹴り上げるため更なる治安改善作戦として、エイツの東南東およそ8km地点にある廃工場を拠点とする武装組織と協力関係を結ぶという、前代未聞の交渉計画を立案。「ついてくる人いないだろうし一人でやりますね」とかなんとか言いながら、お土産片手に単身で武装集団のアジトへと向かい、まさかまさかの交渉成功。行きも帰りもピクニックみたいな雰囲気をまとっていたらしい。
・ちなみにこれらは他の業務と並行して進めているのだが、任された仕事の納期を落とすことは一度も無かった。なんかもう、周りの人間は何が起こっているのかよくわかんなかったらしい。原作者もよくわかんない。
…などなど、これまで関係がギスギスしていた同僚たちから「こんなのただのやりたい放題じゃねーか! マジでこえーよお前!」とドン引きされ、一周回って受け入れられるほどの働きを見せました。
↑武装組織との交渉という大仕事を終えたゆるふわ青年の舞
~お役所へおくるおうた~
ほら! えいつの まわりが あんぜんに なりました!
これで うごけない りゆうは なにひとつ ありませんね?
さあ さあ だから みずと でんきを とおしてね!
(訳:この状況を長年放置してたとか職務怠慢もいいとこだ。
いいかてめぇら、おれをナメるな。命なんかいくらでも張れんだぞこっちは。
面倒事を起こされたくない? ならもっと真面目に働け。わかったな?)
こうして、エイツの人々は劣悪な環境と命の危険から解放され、本来の仕事に専念できるようになり、この地区の小麦生産量は前年比+300%(???)を達成したのでした。目に見える成果を叩きだしたので、多少の狼藉は許されているのかもしれない……。
(この一連の騒動は、「あのみどぱー(緑パーマの略、フリアンの蔑称)、人目のないところでは三面六臂の怪物になって仕事をしているらしい」という噂の出どころになった)
(あとフリアンは本気にさせるとすんげぇめんどくせぇ事になるから、気持ち早めに話聞いとこか、どうせあと二年の辛抱だし…。という教訓がDAGとD.F.Tecの上層部に共有された)
以上の経緯があり、村人たちはフリアンに強い恩義を感じているし、フリアンも苦しい時期を耐え忍び、勤勉に働く村人たちを尊敬しています。彼らは固い絆で結ばれているのです。
村の救世主ともいえる存在に万が一のことがあれば、村人たちの心の奥で今もくすぶっている怒りの火種は瞬く間に燃え上がり、手が付けられなくなってしまうことでしょう……。
頼むから何も起こらないでくれよな!
しかし、彼はいったいどうやってならず者達から信用を取り付けたのか。というかそもそもなんでそんな危険な連中と交渉しようなどという発想ができたのか。
上流階級者の間では、単に優秀というだけでは説明がつかない、突飛な行動と思考原理の出どころを訝しがる声も上がっているとかいないとか。
↑去年描いた作業着姿のフリアンのラフ。エイツではだいたい作業着姿になります。
眉毛細いし肌塗ってないし伸びかけの髪を結っているしで、これだと誰なのかよくわかりませんね。
作業着のサイズが大きいため、袖が余らないように二の腕のあたりにバンドで留めています。
【特別区サンテュエール】
ピエタール山脈麓のアルウェン湖に突き出ている崖の上に築かれた煌びやかな街で、セレブには避暑地としても人気です。
湖に面した最先端には美しい城があり、そこでは年に何度か連盟の上流階級者たちが集う舞踏会が開かれているそうです。
フェガティアの都市の北端にある『楽園門』から続く道路を通ってのみ行くことができるのですが、曲がりくねった山道を2時間ほど走らなければならないため、乗り物酔いを起こしやすい人は酔い止めや睡眠薬を飲んで、道中眠れるように準備してから行くそうです。
(門については次回投稿予定の『フェガティア都市部地図解説』で詳しく説明)
アクセスの悪さに対して不自然なほどに豊かな食と娯楽が用意されていたり、崖際の家々の窓にはすべて鉄格子がはめられていたりと、華やかさと不穏さが織り交ざる妙な空気が漂う街でもあります。
ここは一体、何を目的として作られた街なのか? その謎には『揺籃と怪物』中盤から少しずつ迫っていくことになるのですが……さて……。
以上、フェガティア地方の解説と背景ストーリーでした。
文中でも触れた通り、次回はフェガティアの都市部の地図をご紹介します。
それではまた!