公開投稿

2025.10.08 17:29

【得ざるものども】地図を作ったよ!~フェガティア都市内部編~

※創作物の性質上、時代錯誤な価値観、深刻な人権侵害の描写、ややブラックなツッコミ等、一部不適切な表現が含まれます。あらかじめご了承ください。


作品制作に夢中になってここの更新をすっかり失念し、前回の更新から一か月以上も空けてしまいました!

不定期更新宣言をしているとはいえ、そこまで間を空けないコンスタントな更新を心がけていきたいですね。

あと平成インターネット感満載のセルフ突っ込みも控えて行きたい所です……ちょうどこの文章のような!


ということで、今回は都市内部の地図を見ていきましょう。


【イブレガーロ連盟 フェガティア都市内部地図】

前回お話ししたように、フェガティアではバームントという名前が英雄視されており、これ見よがしにメインストリートの名前にまでなっています。

街の始まりである『栄光門』から、上級市民の居住区画との垣根『勝利門』を通り、特別区サンテュエールに至る『楽園門』まで一直線に貫くこの道は、フェガティアの復興と繁栄を象徴する存在としてその名を轟かせています。

……あと、ひねりがない上に「グロリア」という御大層な冠までつけちゃったこれ見よがしネーミングが、地域内外でちょっとウケているかもしれない。


各門の解説をすると、

『栄光門』…フェガティアの末永い栄華を願って復興後に作られた

『勝利門』…度重なる災害にフェガティア市民が打ち勝った象徴として、もともとあった城門を改名

『楽園門』…サンテュエールという楽園を守護する門というそのまんまの意味

……となっています。


来賓の中でもとりわけ特別なゲストが来訪する際には、普段は歩行者天国になっているアウローラ広場に通行規制がかけられ、厳重な警備の元に高級車が列を成して市中を通過していく様子が見られます。


区画分けは画像左側のようになっています。この順番に則って各エリアの傾向を解説していきます。

各区画は厳密に分けられているということではなく、施設要素の構成比率がグラデーションのように推移していく場所もあります。


【公共機関エリア】

役所、銀行、簡易裁判所、警察署、図書館などなどの公的サービス機関が集まるエリアです。

建物の外見は新古典主義の風合いが強く、色味は白や灰色っぽい感じで落ち着いていますが、通りに面する壁面のレリーフや柱といった装飾はこってりと盛られている印象です。なお、裏通りは地味。

作画コストが地味に高そうなので、写真素材を適宜利用しながら頑張りたいところ…。

勝利門より上の階層はフェガティアの最高権力者達の住まい兼職場となっているのですが、そこにも議会(元老院)、裁判所、迎賓館といった施設があります。

チエーロス城は議長の住まいです。外見はまだ未定ですが、要塞的な趣が強くなる予定。


そうそう、フェガティアでは市長よりも議長の方が実質的な権力は強いそうです。だからどうした。



【オフィス街】

おそらく作中でも一位二位を争うほどよく描くことになるであろうエリア。総合病院は交通面を考えてここに配置されています。一応街の随所に小さな個人医院も存在します。

新旧様々な建物が混在していて、色合いが華やかなものがあれば、古いレンガ造りの渋いもの、ガラスをふんだんに使ったモダンっぽいものまであり、区画全体の統一感はありません。

得ざるものどもの世界は現実ベースだけど根本的にファンタジーです。根底がおとぎ話なので。だから様々な様式の建物が混在しています。

時代背景と技術の進歩具合は多少考慮しつつ厳密性はおざなりなので、そこが気になる方はモヤモヤすることになりそう。作者が考えすぎてドツボにはまるのを防止する目的もありますので、なにとぞご容赦……。



【繁華街】

パリのアパルトマンが立ち並ぶ様や、ミラノの繁華街(ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のガッレリアとかあるあたり)のイメージです。

アウローラ広場に面した大きなショッピングモールが有名ですが、ここ以外にも様々なお店が並んでいます。

勝利門より上の階層にある繁華街は高級店ばかりが立ち並ぶ豪華なアーケード。一般市民はお目にかかれません。

ベルナデッタが社長を務めるのは女性中心の人材派遣会社で、接客や会計がカバー分野なので、オフィス街ではなくこのエリアにあります。

↑アウローラ広場に面した大きなショッピングモールはこれのこと。



【商店街】

繁華街よりも規模が小さく、扱う商品も安価なお店が並ぶエリアです。八百屋さん、パン屋さん、謎の服屋さん、あとは町の洋食屋とか町中華(フェガティアには無いけど雰囲気として伝わってほしい)とか、ああいうあれ!

全体的に雑然としていて、夕方以降は一層賑やかです。墓地近くと小規模工場エリア近くは飲み屋街で、酔っ払い同士の喧嘩が毎日のように勃発しますが、近隣の皆さんはあまり気にしていないようです。

ポリアンサパークに面するところにある古書カフェはシラさんのお店で、コーヒーとホットチョコレートがおいしいんですってよ。店名が一生決まらん……。



【高級住宅街】

上級市民のお屋敷があるエリアです。

ドゥリオルグ家のタウンハウスがあるのは勝利門より下、かつ階層を上がる道路から離れた位置にあるあたり、扱いがややぞんざいな印象を受けるような……。

初代ドゥリオルグ家当主はティアゴという男なのですが、彼も彼であまり良い噂を聞かない男です。いったい何を思ってここに住まいを作ったのでしょうか?


前回の地方地図解説といい、フリアンとルドヴィックのキャラ紹介の文面といい、出される情報を鵜呑みにせず警戒しながら見ていくと「おやおやおや~?」が沢山あって楽しいかもしれません。

……紹介としてはある意味で機能不全を起こしちゃいないか?



【戸建て住宅街】

戸建てといっても一軒家とセミデタッチドハウス(家が二つくっついてるあれ)が半々くらいでしょうか。

庭付きの一戸建ては町の東側に多くて比較的高価、西側にわずかながら存在する区画はすべてセミデタッチドハウスで低価格です。

我ながら珍妙な区画分けをしてしまったなあと思っています。

まあ、都市は生き物だから! 姿かたちがどんどん変わるものだから!



【集合住宅街】

中産階級層向けの建物は、パリのアパルトマンから装飾性を排したようなイメージです。内部は細かく部屋分けされています。

住居者の所得基準が低くなるにつれて、建物の見た目はより簡素になり、都市中心部からは離れていきます。低所得者向けの集合住宅街は、立地があまりよろしくありませんね。

ちなみに墓地に近いところが一番安いです。フリアンはそこに部屋を取っています。一応管理職なのに。

(エイツの事案だけではなく、部下の労働環境改善のための出資をポケットマネーで補填するのが常態化しているため、まず家賃を節約している。食費はもともとそんなにかかってない……)



【公園等】

黄緑色の部分は公園等としていますが、緑地や空き地と表現したほうが正しいかもしれません。

整備されている緑地で一番大きく、市民の憩いの場として愛されているのがポリアンサパークです。

(ふりあんとかいうふわもこ謎生物が「ふわっほ ほわっほ」してたのはここ)


季節折々の花が咲き乱れる自然豊かな公園で、フリアンのお気に入りスポットです。

湖を眺められる所に設置されたベンチに腰掛けて、シラさんの古書カフェで借りた本を読むのが、フリアンにとって一番いい休日の過ごし方なんだとか。

↑ロケーションがポリアンサパークの絵 その1


↑ロケーションがポリアンサパークの絵、その2。ふわもこってなんなんだ……。



【旧市街】

※この項目内には重大な疾患の具体的な症状や惨事の現場、死についての描写が含まれます。


ここはかつての中心地で、フェガティア内でも類を見ないほど治安が悪いことで知られています。

旧市民会館と広場、それを取り囲むように聳え立つ古い違法改造アパルトメントが密集し、通りを埋め尽くすトタン屋根のバラックが見通しを悪くして、時々開かれる闇市を覆い隠しています。


どうしてこんなことになってしまったのかというと、前回の地方地図解説で飛ばした『疫病』に関する街の歴史が深くかかわってきます。


まず、旧市街地は本来もっと中心地のそばまで広がっていました。建物はもともと石造りだったので、火事で焼失することもありませんでした。

なので、食と仕事を求める人々の住まいとして大いに活躍したのですが、そこへ無情にも疫病が大流行します。

この疫病、本来の感染力はそこまで強くないのですが、食糧不足による人々の免疫力の低下と、生存圏の不足による特定地域の人口過密が合わさり、異常な致死性の高さもあって、全世界に甚大な被害を及ぼしました。

貴族、庶民関係なく多くの人が感染し、高熱、下血、全身のただれなどの症状に苦しんだほか、一命をとりとめても神経損傷による顔面や身体のマヒ、赤黒くてゴツゴツとした皮膚の異変を伴うアザ等の後遺症が生涯残るため、それらを苦にして自ら命を絶つ者もいました。


未曽有の事態を前にして、以前は反目しあっていた教会と医療従事者が協力し合い、治療と感染防止策の策定に奔走します。

まず共同体の重大な意思決定を行う貴族たちを現在の勝利門より北へと隔離。それ以外の市民を街中に留めて対策を講じていくことになりました。(市内の区分けにも影響)

隔離施策によって貴族の感染状況は落ち着きを見せたのでした。


しかし、市中ではその後もずっと疫病が猛威を振るい続けます。

まだ大きな病院もない時代。医療品と人手も不足している。そんな中、どこが医療施設として開放されていたのでしょうか?


市内南西に位置する墓地エリアのあたりをズームでご覧いただきましょう。



かつて、この灰色で示されたエリアいっぱいに、敷地の三分の一を占める立派な聖堂がありました。残りの土地にはよく手入れされた墓地が広がっていたとされています。

アウローラ広場の大聖堂がある区画と比べて、その大きさが一体どれほどのものだったのか、なんとなく想像していただけたら嬉しいです。

疫病流行の最中、この大聖堂を所有する某教会のとある宗派は、ここを病院の代わりとして開放することを決めました。

大いなる主の御心の元、どんな人でも受け入れ、回復を祈り、その身を清め、聖職者たちに与えられる数少ない食事さえも患者に優先して回しました。医療従事者が行う投薬等の科学的な治療行為も積極的に手助けしました。


そんな献身もむなしく、疫病流行の末期には、大聖堂はもはや病院ではなく遺体安置所の様相を呈していたといいます。

遺体を埋めるために墓地全体を掘り返しても土地が足りず、敷地内だけではなく旧市街の通りにも行き場のない遺体があふれ、地域一帯の衛生環境は最悪を通り越して地獄の様相に……。激しい汚臭と疫病とは別の感染症が問題となるほどでした。

それから間もなく治療薬が開発されて疫病の脅威が去り、短い争いを得て身分制度が確立されたあと、使い捨ての労働者たちの手で旧市街の清掃活動が行われ、山のような遺体は荒野の一角にすべて埋葬されたことで、このエリアの衛生問題はようやく収束したのでした。


旧市街全体に広がった地獄のような様相、疫病の忌まわしい記憶を嫌った一部の権力者は、旧大聖堂と旧市街地を汚らわしいものとして取り壊すことを決めました。


ところが、旧市街に住んでいる人々から反発が起こります。

「金のないやつをあんた等の言う 汚らわしくておぞましい場所 に詰め込んでおきながら、その代わりを用意しないまま取り壊す? そこら辺の地べたで寝ろってか? 俺たちを何だと思ってるんだ!」

強制退去を命じようにもうまくいかず、迷路のように入り組んだ旧市街で繰り広げられる過激な抗議活動は次第に激化し、市民と治安維持組織双方に少なくない死傷者が出る事態にまで発展してしまったので、議会は完全撤去を断念し、一部区画のみ現存させることにしました。


そんな経緯で、旧市街は水路を挟んだ先の一部区画が今も残され、下級市民の中でもとりわけ荒っぽい人たちが暮らすスラム街になったのでした。

ちなみに、大聖堂等の取り壊しで生じた膨大な瓦礫は、旧市街地を新市街地と隔てる壁の建材として再利用されました。

うーん、なんらかの当てつけ……?


ところで、「大惨事の舞台とはいえ、大いなる主の御心の元、多くの市民を救おうとした教会の献身の象徴たる大聖堂を取り壊す」という、気持ちは分からなくもないが歴史的な経緯と宗教的な意義を考えると罰当たりにもほどがないか?とツッコみたくなるあの決定には、実は教会の宗派による権力争いが深くかかわっています。

この宗派同士のパワーゲーム、そこから派生した宗教と政治の癒着が、『フェガティアひいてはイブレガーロ連盟の歴史的汚点』と後世で厳しく評されるほど、長く続く深刻な差別問題を生むのですが、これについて話し始めると非常に長くなるので割愛します。

(というかがっつり本編にかかわってくる話なので、語りすぎるのもつまらんというかなんというか……)


↑本編より約2年ほど前の墓地を描いたイラスト。

向かって左側はお金持ちの墓、右側は引き取り手がなかった遺体を焼いて砕いて埋めている共同墓地です。

ルドヴィックが立っている所は石畳のようになっていますが、これは旧聖堂の床材の残りです。

有刺鉄線が巡らされた壁の向こうに見えるのが旧市街。内部の闇鍋感がこれだとあまり伝わってきませんね…。




以上、都市内部のご紹介でした。

触れていない部分もたくさんあるのですが、舞台としてきちんとお出ししていけたらいいなぁと思います。

次回内容は未定です! 何を書こうかな~。


ではまた!