さびれた絵画
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何やら絵画の前でガサゴソしている、見慣れたギャラリーの管理人がいる。なにかあったのだろうか。
シンプルな額縁を壁から取り外し、床にゴトンと置いてから。額縁からキャンバスを取り出し始めていて、まさか。
不安になって口を出す。
「この絵、撤去しちゃうの?」
管理人は少しだけ驚いて、ホッとしたやわらかい表情で話し始めてくれた。
「それが…
『これあかんわ。題材からカスっとる。上から描き直すわ、場所保留でよろ。』…って。まったく。
それはさておいて。」
ヒソヒソ、秘密の話。ここだけのお話。
「彼には内緒だよ。更新したら、また遊びにきてね。」
「うん!もちろん!」
元気よく答えて、廊下を走る。館内には誰もいないから全速力で空間を駆け抜ける。
帰って、はやく伝えたい。うれしくて、うれしくて。
呆れているようで、どこか安心しているような表情や声は、とても心地の良いものだった。