公開投稿
2026.01.12 20:24
「ゆ・骨」2026/1/12(月)
68
祖父の葬儀を終えて、毎日を懸命にやるほかないと思ってやってきたが、体調ががたぴしとし始めた。
頭の座標が定まらない。
常に頭の周りに気流を感じていて、体が揺れている。
元の軸に戻さなければ、と思って体に力を入れるから全身がガチガチになっている。
筋肉が細く硬くなる。
おわってもいいよ、と知っているぜんぶの声で言われる。
それに「あー、今はまだ……ちょっと……」の肩をやって、またその声が聞こえて、の繰り返し。聴覚過敏で暖房がつけられない。吐き気未満の不快感。意味ならいくらでも見つけられそうなさみしさ。またリモコンを間違える。耳栓が白くて柔らかくて苦しい。
妹に急に見せられた、妹の彼氏の上半身裸の写真がフラッシュバックして未満が吐き気になる。自分の肌を見るだけで具合がわるいのに、なんで妹の彼氏の筋肉自慢でこんなふうにならないといけない。
俺がだめなんだろうか。そんなことはない。
本当に本当に本当に心を許した人の手がいいだけだった。床から毛が生えてくる。カーペットなんてなくても生えてくるよ、毛は。かなしい?さみしい?とわらわら寄ってくる白いどろどろに、ああ、とか、うん、とか、なんとなく返しながら、祖父の骨をまた思い出していた。
祖父の骨。骨がこちらを向いて、目が合ったとき、コンクリートの天井からゆっくりとひらがなの「ゆ」が降りてきた瞬間から、ちょっとずつすべてが歪んで、でもそれも思い過ごしなのかもしれなかった。
ずっとこうだった、と言われればそうなのかもしれなかった。かなしいかは分からない。鏡が嫌で風呂が難しい。日付を跨いだら、ケロッとしているのかもしれない。どうだろう。泣いている自分2の絵が浮かぶだけで、俺は涙のひとつぶも持っていない。わはー、と大きく言ってみる。
片付けても片付かなくて、片付いているかもしれないけれどドキドキとして、落ち込む。暇なくパニックになる。ぜんぶのやり方をたちまち忘れる。思い出せた?と聞きにくる人に、はあ、とか、うん、とか返して、また8年前みたいになってきたな、と小さく失望しながら薬を飲む。
ルールを守って、飲む。飲んだっけ?飲んだか?飲んでなかった。
がんばりてー。
店に行くと、自分がつまんなくて帰りたくなる。石を蹴る。自販機は好きじゃない。短歌、まだがんばれるはずだ。
さみしー、さみしーってなんだ?わはは、と言いながら、このまま自分を騙せるように湯たんぽに湯を注いだ。視力がわるくて、ぜんぶこぼれた。わはーって言った、はーの口がぶるぶる震えていた。また声が出ない。