3. 自由意志
「力こそが全て」と疑心に塗れた街の頂点に立った為政者は言いました。孤高にして、故に孤独であり、正義を敷く人間の言葉に対して私が嫌悪を抱くことは無いでしょう。彼もまた人間であるように（私には見えており）、血と肉と骨を持った以上、何らかの力を振りかざすか、あるいは振りかざされる運命からは逃れようがないからです。もっとも我々は無法地帯に於いても社会的な生物ですから、力をなんらかの社会的な契約の容に変えることが殆どですが、リヴァイアサンを畏れることがないのであれば、純粋な暴力を以て他者に隷属を強いることもあるでしょう。またそれは一つの流れのようにして存在しているものですから、自分がそれに身を委ね、それ以上を望まないことが最も痛みの少ない立ち居振る舞いであるということを、私は知っていましたし、それらはすべて自らの自由意志に因って選択されるものでした。
![【参】濫觴と人魚/[叙述記録: 一]](https://assets.xfolio.jp/secure/1359786657/creator/96314/works/1057537/7842541_L3ngutKw9R.thumb.webp?hash=PLZpcKFS80i3_95kSm60Uw&expires=1766786400)
