洗濯物を干した午後の
2021.07.23
さんさんと陽の刃が直下に照る日。中心街から離れた郊外の窪地にある、散策路の外れの深い林。
その背の高い木々に覆われた暗く人気のない林には十分に整備されていない湿った細い道があり、
忙しなく飛び交う羽虫と行儀の良い蟻たちの行列がひしめき合って、枝葉の沈んだ浅い池に暗い影が反射していた。
主張の強い幾種類もの生物の声はこの荒れた地を牛耳り、梢の音に紛れ互いを牽制しながら
"さっさとお家に帰りなさい"と、むやみに足を踏み入れた能天気に染まった人間たちをまるで赤子のように扱う。
その人間たちといえばこの林の住人たちにやんやと追い立てられ、身に沁みついた小綺麗な思想を手放しざるをえなくなる。
そんな陰湿で、閉鎖的で、決して明るい気分を得るのにふさわしいとは言えない鬱蒼とした場所に足を運ばせるきっかけというのは
おおかた、早めに起きた午前の洗濯機を回し終えぴったりと並べ干した洗濯物を見た後に、突然思い立って外へ出たという程度の些細なものだった。