12/21
0
247
両親は軍人だった。
強く優しく善良な彼らが俺の誇りだった。
ある日、いつも通り家に帰ると、世界は一変していた。
オフホワイトの壁も、気に入ってた毛並みの良いラグも赤く染まり、その中央に動かない両親がいた。
父が持つ軍事機密を狙っての犯行だった。
その情報は2つの組織が狙っていた。
片方は意図的に世界大戦を引き起こしたい武器商人、もう片方はそれを防ぐため情報を闇に葬りたい組織。
実際に両親を殺したのは、武器商人たちだ。
けれど、ATF……イサの所属する組織が狙っていなければ、多少時間をかけてもまた別の作戦を練っただろう。彼らも本当なら自分たちが「存在する」ということを誰にも知られたくないのだから。
情報はすでにATFが入手しており戦争へ発展することはなかった。
――両親は何の為に殺されたのか。
そして誓った。
両親の命を奪った武器商人に復讐し、組織を内部から壊滅させる。その為に組織に入り、それなりの地位を得た。義賊を気取るATFも同時に潰す。
「同罪だ」
けれど潜入してみればATFの人々は善良だった。
いつも通り懐に入って使い捨てるはずだったイサは、スパイとは思えないほど清く、その美しい心で、嘘だらけの俺を信頼してくれた。
それでも、俺は……
※ATF側に人的被害が出なかったのは、スミスの采配。
(半年過ごす間に絆されてしまったようです)