「何か、お探しですか?」
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不意にそう聞かれ、僕は戸惑ってしまった。
今まで同じ来館者だと思っていたからだ。
「私、ここの館長なんです」と、彼女が言う。
突然の事態に、頭が追いつかない。
目の前にいるのは、どう見てもただの女子高生だ。ジャケットには、職員証や名札はついていない。
「お探しですか」と聞かれても。
ここに来たのだって、夢の中のように、いつだかよく覚えていないのに。
何を探しているのか、こっちが聞きたい。
「こちらの本はいかがでしょうか」
彼女が僕に差し出したのは、黄色い表紙の絵本だった。
こんな歳にもなって絵本なんて、と。
だがなんとなく、表紙をめくった。