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2025.02.19 11:12

【落書き】チョコミントの味(高2高1の両片思い兎赤)

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チョコミントの味 「あかーし、ひと口ちょーだい!」  部活帰りの貴重な糖分補給タイム。自販機で買ったチョコミントのアイスを食べようと封を開けたら、すぐ隣では先輩が眩しい笑顔で俺のチョコミントを凝視している。 「木兎さんのひと口、めっちゃデカいじゃないスか……」  ちょーだいちょーだいと喧しい先輩を横目にアイスをガブリと齧った。スーッと鼻に抜けていくミントの香りと一拍遅れてやってくるチョコの甘味。美味しくないと言う人も多いこの味だけど、俺は結構好きだったりする。 「ひと口!」 「あっ……⁉︎」  アイスが俺の口元を離れた一瞬の隙を木兎さんは見逃さなかった。猛禽類が獲物を狙うみたいに、素早く俺のアイスにガップリと食いつく木兎さんのひと口は大きい。食べやすいところを思いっきり齧りとって、満面の笑みで木兎さんはチョコミントを味わっている。 「これ、歯磨き粉の味じゃん!」 「えぇ……ひとのアイス食っといて歯磨き粉はひどい……」 「だって同じ味がするんだもん」  口がスースーする、とか文句を言うぐらいならそんなにガッツリ食べないで欲しかった……俺のアイス。ちょっとだけ残念な気持ちで続きを食べたらいつもよりミントが効いてる気がしたけど、それはたぶん気のせい。 「あかーし、ほら」  にゅっと隣から伸びてきた木兎さんのアイスが、俺の口元ギリギリに迫っていた。まだ綺麗な形を保ったままのアイスは、ごくごく普通のバニラ味。悔しいから木兎さんと同じぐらい齧ってやる。きっちり歯形が付くぐらいに大きく口を開けて、ばっくりと。 「あま……」  チョコミントを食べた後のバニラは、想像よりもずっと甘い。バニラってこんなに甘かったか?  釈然としない気持ちでアイスの塊を口の中で転がすと、ふんわり鼻に抜けるわざとらしいまでのバニラ香料。匂いまで甘すぎて心配になるレベル。 「そりゃ歯磨き粉に比べたら甘いだろ」  ヘラっと笑いながら、木兎さんも自分のアイスを齧った。まだ寒いってのにバニラは速攻で木兎さんの胃に収まって、残ったのはプラスチックの持ち手だけ。このひと頭キーンってならないんだろうか。 「あっま。でもバニラうまっ!」 「チョコミントもうまいっすよ」  バニラの後のチョコミントは、きっとスースーするんだろう。さっきもミント感すごかったし。木兎さんに負けじと溶け始めのチョコミントをまた齧る。さっきよりやわらかくなってて食べやすい。それになんかさっき食べた時よりも、甘い。 「あれ」  狐につままれたみたいだ。ミントのスースーした感じはそのままだから、チョコが甘いんだろうか。夢中で食べすすめたらチョコミントもあっという間に全部俺の胃に収まった。アイスはあっという間に無くなっちゃうからなあ。 「俺、歯磨き粉味も嫌いじゃないよ」 「はあ」 「またひと口ちょうだいね。あかあし俺と違う味ばっか食べるでしょ」  イヤです、とは言えなかった。先輩命令だからとかじゃなくて、確かになと思ったから。  俺と木兎さんで違う味を食べてたら、いつも二人で違う味が楽しめるよな。悪くない気もする。 「今の俺たち、きっと口ん中同じ味になってるなあ」  吐く息が白くなるぐらい寒いのにアイスを食べて、二人で同じ味を共有して。それに気づいてますか木兎さん、同じ味なだけじゃなくて間接キスしちゃったんですよ俺たち。 「アイス美味かったですけどなんか寒くなっちゃったんで、肉まんも食べたいです」 「いいよ、じゃこの先のコンビニ寄ろ」  きっと肉まんでも『ひと口ちょーだい』が発動するんだろう。  小さな期待と少なくない罪悪感の間で心が揺れたのがわかったけど、俺はわざとそれに気が付かないふりをした。  2025.2.19