白の闇
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2023.8.1
さむいさむい廃屋に
ちいさな灯りを持ち込むと
影が集まり歌が始まり輪になって踊り出すの。
-ある雪に覆われた地帯を訪れた旅人のお話-
旅人は凍えるからだで、ちいさな灯りと共に、白い平原を進みます。
足は感覚を失い、次第に体力が尽きていくのが分かります。
このたびはもう終わりかな、などと考えていると、旅人の前に寂れた小屋が現れました。
旅人が雪の届かない部屋で、安心したように目を閉じると、まぶたの裏がほのかに明るくなります。
目を開けると、囲炉裏のようなものを人が囲っていました。
影は四方に延び、その中心は旅人です。旅人は燃えていました。
ららら……
歌を歌っているんだ。踊っているんだ。
旅人は、目が回って、囲炉裏に倒れこみました。
まぶたの裏はまだ明るい。
ちら、と目を開けると、それはわずかに残った旅人の灯りでした。
骨のようなものを残して、賑やかな人々は消えていました。
旅人は暖を取りました。