過去発行物再録
溶ける銀紙はがれる砂糖
彼がすべて自分のものになればいいと思った。いつまでもずっと手の届く場所に置いておきたかった。つむじのてっぺんからつま先まで彼をかたちづくるものなら全てが欲しかった。もう二度と彼から離れることなどあってはならない。我々は肉体の殻に籠もって生活している。肉体と心の調和によってできる個人という自我。肉体は彼であると同時に彼の心を閉じ込める容れ物である。ならばまずは肉体を手に入れるべきではないだろうか。肉体が馴染めば心もおのずと形に添うはずだと私は思った。あの身体の中に彼が詰まっている。容れ物は拡張したり縮小したりして、しかしそれが彼にとって最適な広さだと感じている。心をやわらかく曲げるにはどうしたらいいだろう。容れ物が変われば心もおのずとかたちを変えざるを得ないのではないだろうか。小さくしよう。彼の移動手段を封じて容れ物を小さくすれば、彼の心はそのかたちに寄り添うはずだ。誂えられたかたちに馴染んでいくはずだ。さながら湯煎したチョコレートを型に流し込むように。
2013/09/15発行 チョコレートはハーシーのキスチョコで、医者は『SHERLOCK』のジョン/兄貴が初々しい!
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