わたしの太陽
161
『わたしの太陽』
セルヴァトロスという、幻獣や妖精たちの住まう地がありました。
美しい大自然で覆われたこの地を、人々は神秘の聖域と呼びます。
森の奥深くで、獣人の少女とアルラウネの少女が話していました。
「ね、ねぇペルネ。……ホントに探しにいくの?」
アルラウネのロズは心配そうに見つめます。
そんなロズとは反対に、獣人のペルネは笑顔で満ちていました。
「任せてよ! 絶対太陽の石を見つけてロズを元気にするから!」
「でも太陽の石はおとぎ話の……私はペルネが側にいてくれれば」
アルラウネは生まれついた場所から移動することができません。
陽が当たらないこの森では、アルラウネであるロズにとって
有毒でしかなく、日に日に衰弱していったのです。
「あたしは、ロズが元気でいてほしい!
それに太陽の石は砂漠の国にあるって龍の長老様がいってた!」
「さ、砂漠の国ってここからとても遠いんじゃ……」
「大丈夫、大丈夫! あたし、体力には自信あるから!
それじゃ、行ってくるね!」
「え、ちょ、ちょっとペルネ!」
再度ロズは引き止めようとしましたが、獣人である彼女は
あっという間に遠くへといってしまいました。
そして、半年の月日が流れました。
ロズはますます衰弱していきました。
自分はもうだめだろうと、ロズは悟り、瞳をゆっくり閉じます。
「ペルネ……あなたに会いたいわ」
そうロズが呟いた、そのときでした。
「ロズ、おまたせ! 見つけてきたよ、太陽の石!」
突如聞こえた馴染みの声に、ロズは目を見開きました。
そこには大好きな親友の笑顔と、影が消えた森の姿がありました。
「これでまた、いっぱいおしゃべりできるね!」
太陽のように笑う親友を見て、ロズの目からは涙が溢れるのでした。
----------------------------------------------------------
まだ幼かった頃、彼女がこの森に迷い込んでからだった。
暗闇に咲く小さな花。
わたしにとって光は、あなただったのだ。
あたらしい生命が芽吹き、あざやかに色づいた森の中で、
彼女たちは今日も、話に花を咲かせている。
----------------------------------------------------------
2019年秋開催グループ展「BEST STYLE」で展示した作品『nine-ナイン- ~遠く、誰かのものがたり~』より
「ファンタジー世界と物語」をテーマにした、9つのイラスト&ショートストーリー作品です。
イラストの無断転載/無断使用/AI学習を固く禁じます。
Unauthorized reproduction, use, or AI training of this illustration is strictly prohibited.